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2006-08-23憎しみで人が愛せたら

眠らない漫才師

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『どーも! ナイツでーす』
「いやー。いきなりやけどね。オレ、眠いわ」
「ええー…!、がんばろーやー。てか、はよ、寝ろ!」

ナイツは、山田ミッドナイトと、木村オールナイト漫才コンビである。彼らは、夜11時以降しか、活動しないという制約を立てて漫才をしている。それは、全く売れなかったときから、在る程度人気を確立した現在まで変わっていない。

木村「僕らはこれをユニットやと思ってます。よう歌手の人とかやってはるやないですか。演劇でもよくいろんな劇団の人らが集まって一回だけの企画公演をやったりしてますが」

山田「はじめはダジャレです。僕が信也で、こいつが徹矢。深夜と徹夜で、ミッドナイトオールナイト。くだらんでしょ?」

木村「それで漫才やろかいうことになって。こいつが、名前決めたんです」

山田ナイツ。二つの夜って意味ですね。うわ恥ずかし」

彼らのファーストライブ「二つの夜~盗んだマイクで語りだす」は、深夜12時スタートという特殊な時間帯ながら、多くのファンがつめかけ、新人のお笑いライブとしては異例の客入りであった。

「まあ、眠いんですけど頑張りますわ。仕事ですしね」
「当たり前や! どうも、すみません。僕らナイツいいます」
「夜の複数形ということで、ナイツです。すいませんね。なんか学があるとこ見せてもて」
「全然見せてへんよ。もうお前、はよ寝ろ。いやね、僕がミッドナイトで」
「僕がオールナイト。二人でナイツ言うわけですわ」
「僕ら、朝はバイトしてますんで、夜だけ漫才してます」
「まあ、半分寝言みたいなもんですわ」
「静かに、寝ろ! それを聞かされるお客さんが失礼やわ」

そして12月23日のまたもや深夜12時にスタートした第二回ライブクリスマスナイツ」も大成功。その次の年に始まった深夜の生放送コント番組「夜商売」が、深夜番組で10%の視聴率をとり、ナイツは一気に全国的に名が売れることになる。彼らの突っ込み「はよ、寝ろ!」はバリエーションを伴って流行語大賞となった。

「まあトゥナイトとか、僕らの心の姉さん達ですわ」
「心の姉さん、呼び捨てか。はよ、寝ろ」
「残念ながら、今はなるみさん一人になってますけど、そんで僕らのところ入ろかいう話もあったんですよ。夢の中ですけど」
「もう、はよ寝ろ。夢見ずに熟睡しろ」

「夜にしか漫才をしない」「夜に絡むネタしかしない」、この無謀とも思えるルールを、二人はデビュー3年目にして、未だ実行し続けている。

木村「いや、普通芸人としてのルールじゃないですからね」

山田ナイツというコンビでやっている間でのものです。あと所詮、企画なんで、長続きしないなあと思ってます」

木村「一生、これでやっていくんなんて、ちょっと自信ありません(笑)

そんな飄々とした二人だが、売れるようになってしばらくしたころ、同事務所のある有名なベテラン漫才師に呼ばれ、ナイツが、頑なに昼の仕事を断っていた事について、説教をされた。仕事がもらえるだけで素晴らしいのに、それを自らの我が侭で断るなんて、何様だ、と。

存在だけで、威圧感のあるベテラン漫才師に対して、二人は気圧されながらも答えた。


「これは僕達の企画の方針で、それを変えるなら、企画は解散です。それにお金ならアルバイトで稼ぎます」

これを聞いて、漫才師は怒鳴った。

「二束のわらじで、芸が出来るか!」

とっさに、オールナイトが怒鳴り返した。

「二束のわらじもはけないで、芸が出来ますか!」

震えながら、それでもずっと漫才師を見つめる二人に、漫才師

勝手にしろ」と言って、部屋を出て行ったという。

山田「めちゃめちゃ怖かったですよ。こいつが、余計なこというから…」

木村「オレのせいかよ。最初に反抗したん。お前やんけ」

何故そこまで、ポリシーにこだわるのかを聞くと、彼らは恥ずかしそうに答えた。

山田「それしか意味が無いんです(笑)」

木村「基本的に、人に迷惑をかけるものじゃなかったら、後は俺らの思いというか、そういうのが大事じゃないですか。やっぱり」

山田「元々、ポリシーのところしかなかったわけじゃないですか。まあ、洒落ですけど。なら、それは捨てられない。捨てないから、存在している。それだけなんです」

彼らの凄さは、発想の斬新さや、それを維持していく技術や底力だけでなく、この一途さ、自分の中心を自分に置いている強さだと思う。

「もう、休ませてもらわ!」
『どうも、おやすみなさ~い』
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