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2006-09-05詳細をぶんなげる

鶴の恩返し

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「見てはいけないと言ったのに…」

「お、お前は」

障子の向こうには美しい鶴がいた。そして、機織機の傍らには天井から吊るされた男の姿があった。男が、低く、ウウと呻いた。顔は、血まみれで判別ができない。

男は皮を剥がされて、吊られていた。


翁は男の肩に大きな火傷の跡を見つけた。

「源蔵…」

カタリと機織が鳴った。

翁は、唐突に我に返った。

苦しくなって息を吸う。頭が回転する。心が軋み始めた。

頭が理解し、心が拒絶する。


「では、この、着物は。お前が、織った、着物は」

翁は、慌てて、羽織を脱ぎ捨てた。床に広がった羽織の皺が、亡き妻の顔に見え、翁は、たまらずに吐いた。

「おおお、おおおおおお……」

男がウウと呻く。血の匂いがする。吐瀉物のすえた匂いがする。

懐かしい妻の匂いがした。翁はむせび泣いた。


「私は、あのときのつるです。」

鶴は、白い着物を血で汚しながら、美しい声で、静かに言った。


あのとき。

雪の中。撃ち殺したツル。赤い血。子供。ツル。赤い血。銃。源蔵。赤い血。白い雪。赤い血。ツル。赤い血。血。つる。裏切った。血。殺した。血。血。血。血。血。血。すまない。血。血。血。血。血。血。血。血。血。「お願い! 殺さないで!」

翁は目を瞑る。


「おじいさん、これまで、どうもありがとう」

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