だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2006-10-28ヒデブ(一人で生きて、一人で死んで、一人でデブって死ぬのか…)

月が吼える 

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旅の途中行き倒れた僕は、ある親切な夫婦に拾われた。ある夜、町の風習で、私は夫婦と一緒に闇に浮かぶ満月を眺めていた。

「退屈じゃありませんか?」

私が首を振り、気遣ってくれた夫婦の一人娘に笑みを返すと、彼女は「よかった」と言って微笑んだ。その笑顔が私には眩しくて、

 「あそこには、何があるんでしょうね」

と、ついおかしなことを口走ってしまう。綺麗な笑顔に心が無防備になっていたのか、疲れ削られた精神のせいか。彼女は、そんな私を不審がることもなく、

「死んだ人の魂は、空に昇って、月に行く。そこで私たちを見守ってるんですって」

と教えてくれた。私ははっとする。

「妹も、そこにいます」

その瞬間、

ウォォォォオオオオオオニィィイィィイジャアアアアアアアアアアアアアン

雷鳴というよりも悲鳴に近い音が辺りに響いた。体の奥底にまで響き渡り、生理的な嫌悪と恐怖を呼び起こす叫音。彼女は耳を塞ぐ。遠くに光の柱が立つのが見えた。

衛星レーザーですってね。昔の機械が生きてたって」

彼女は自らの体を抱き、恐々と光の柱を見る。

飽和した科学を捨て、原点に戻った人類は、その捨てたはずの科学に怯えている。捨てて逃げることは決して解決にはならないのだろう。

地球外に吹き飛ばした筈の妹は、衛星軌道上に留まり、周囲のデブリと融合し即席のレーザー砲となって僕を探している。その光の柱をもって、今度こそ僕を抱きしめるつもりだろう。

「もう行きます」

私は立ち上がり別れを告げた。彼女はとても驚き、哀しそうな顔をした。そんな彼女の顔を妹は許しはしないだろう。しかし、妹をそんな風にしてしまった私は、妹を許しにいかねばならない。

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