だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-01-17伊代は、まだ、住職だから

即断探偵

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無考即断探偵・言帝早人は、助手の定吉と共に結婚式に出席していた。

「……退屈だ! どこかにおれを満足させる魅力的な謎はないものか。定吉!」

定吉、ゆっくりと料理を味わいながら、主人に答える。

「良い探偵は、陰惨で奇怪な事件を引き寄せる引力を持ちます……ご辛抱を」

「暇だッ! 暇だッ! 暇だッ!」

「ほらほら、新郎新婦ゴンドラで降りてきますよ。うわぁ、派手だなあ」

「何だあんなもの。降りてくるのがわかりきってるものが降りてきて何が面白いんだ。おれは面白くない!」


ゴンドラが降り立つ。しかし、新郎新婦ゴンドラから降りてこない。出席者が拍手を止め、その異様を感じ始めたそのとき、二人の体がグラリと揺れ、それぞれが前と後ろに互い違いに倒れた。二人の体は、ゴンドラの手すりで二つに折れ、干された布団のようにぶら下がっている。悲鳴が式場に、混沌スイッチを入れる。


「定吉!」

主人の叫びと同時に定吉がゴンドラに走る。

言帝早人は、戸惑いどよめく人間達を一喝する。堂々と、爽やかに、根源の威容をもって人を惹き付ける。

「この謎! 探偵・言帝早人が預かった!」


どよめきの方向が、探偵に収束する。それは式場の混沌を鎮める十分な効果があった。

「定吉! 説明しろ!」

いつの間にか、主人の元に戻ってきていた定吉が説明を始める。

新郎新婦共に絶命しています。死因はおそらく出血死。二人とも胸に刺し傷があり、ゴンドラは血の海です。しかし凶器らしきものはゴンドラには無し。ゴンドラに二人が乗り動き出すまでをスタッフが複数人で確認しています。スタッフ犯人でなければ、ゴンドラが動き出し降りてくる間に、二人を殺し、なおかつ凶器を隠さなければなりません。非常に奇妙かつ大胆な事件です。Aクラスミステリと判定致します」

探偵はギラギラと目を輝かせながら報告を聞き、小さく笑うかのように息を吐いた後、式場全体に聞こえるような大声で言った。

「全然わからん!」

帰るぞ! とにこやかに宣言し、満足そうに探偵は大股で式場を出て行った。後には混沌だけが残った。




人は彼を「無解決探偵」と呼ぶ。

sasuke8sasuke82007/01/18 22:49探偵も探偵でない皆も、見る分には榎木津礼二郎が大好きです。

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