だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-03-10おれはインターネットを何も知らない

取り戻せるもの/戻せないもの

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インスパイア

私家版ショートショートブログの書きかた

ネコ先生ショートショートから

http://d.hatena.ne.jp/nekoprotocol/20070227/1172575741

「これを持って行きなさい」

そう言って母さんは、自分の綺麗な右目をえぐり、抜き取って、幼い私に手渡した。

「恋する乙女の眼球は、高い値で売れるの。其れは多分、幸せな色で輝くから。母さんはもう恋はしてないけど、あなたを見つめるこの眼はきっと、同じ色で輝くでしょう」


あれから二十年。二千万で売れた母さんの眼は、持ち主を転々として、今私の目の前にある。眼の代金で、私は大学を出て、そこそこの会社で、それなりの結果を出し、私の幸せに足る人生を手に入れた。過去を取り戻すだけの金と機会を手に入れた。

「遅くなって、ごめん」

透明な液体の中でゆらゆらと揺れる眼球は、とてもグロテスクで、母さんの面影など感じられなかった。しかし、ぼんやりと暖かく優しい光は、私の網膜を突き抜け、私は実に二十年ぶりに、声をあげて泣いた。

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