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2007-03-14そんな未来は無い

女の子が生まれたら③

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娘と一緒にメガネを買いに行こう。

多分、娘はコンタクトが良いとか言い出すだろうが、それだけは俺は譲らない。珍しく頑固な俺に最初は機嫌を損ねていた娘も、オシャレなメガネ屋につくとぱっと顔を輝かせる。白で統一された店内に並ぶメガネは、それだけでインテリアのように美しく、しかも店員さんが皆、娘のタイプメガネ男子メガネ女子ばかりだったおかげで、ミーハーな娘はそれだけで満足したようだ。俺を差し置いて、メガネに突撃する娘を見て、俺はやれやれと思いながらも、そうその顔が見たかった、と満足するのだ。


案の定、俺が推薦するメガネは、一目見て却下されてしまう。それでもなお食い下がる俺が差し出すメガネに一つだけ、娘が試着してくれたのがあって、それは(これは親バカだけど)娘の可愛さを100倍にして、でもそれが拡散しないようシックなフレームがきゅっと抑えたような、感動もののメガネだった。それを見れただけで俺はここに来て良かったと思い、娘も新しい自分を気に入ったようだったのだが、娘は困った顔をしてしばらく思案した後に「自分で選んだのにする」と言って、メガネを返してきた。そうだな、それがいいなと娘に教えられたような気がして妙に納得した俺は、それから自分の新しいメガネを見る事にした。それでも、どうしても目線は娘を追ってしまうのだが、最初はしゃいでいるだけだった娘が今や真剣にメガネを吟味しているのに気付いて、俺は何故だか胸がいっぱいになり、話しかけてくれる店員さんに、満足に答えられずに、目をごしごしとこすり続ける。


結局娘が買ったのは、赤いセルフレームの、可愛いがオーソドックスメガネで、でも俺は「いいんじゃないか」としか言わなかった。娘が自分で選んだメガネなのだ。さっきの涙がぶりかえしそうになり、慌てて空を見る。いつの間にか、涙もろくなってしまった。

帰り道、娘はまだメガネをかけなかった。


夕食の後、食卓に残り、洗い物をする妻に今日メガネ屋での出来事を話していると、娘が二階から降りてきて、無言で冷蔵庫をガサガサして、パックの牛乳を取り出すと、そのまま一気にあおる。

「こら、行儀が悪い」と娘を注意した妻が娘の顔の変化に気付き、表情を和らげる。「あら」

にこにこと楽しげな妻を見て、俺は、どうだ俺たちの娘は、と何だか無駄に誇らしげな気持ちになる。

娘は、照れくさそうに「何よ」と言うと、さっさと階段を上がっていってしまったが、今日は寝るまでずっとメガネを付けてるだろう娘を思うと、俺の顔はますますにやけてくる。

「あなた、その顔」

と妻は笑いながら注意するのだけど、しょうがない。

だって俺、こんなに幸せなんだもの。


という夢、もしくは病気

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