だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-04-13その逆はない

ベビー探偵

| ベビー探偵 - だって、思いついたから を含むブックマーク はてなブックマーク - ベビー探偵 - だって、思いついたから


「こんなところに、赤ん坊が」

茂木義春が、部屋に入ったとき、赤ん坊はぐずり始め、やがてわんわんと泣き始めた。

「くくっ、お前にもわかるようだな。そうさ、俺は悪人だ。マヌケな警察はまだ証拠をつかんでないようだが、俺は親友を殺し、その罪を自分の恋人押し付けたんだ。へへへ、最低だなあ」

「本当に、最低だな」

低い声が部屋に響いた。茂木は部屋を見回したが、やはり誰も居ない。

「な、だ、誰だ!」

動揺する茂木。しかし、次の声は意外なほど近くから聞こえた。

「ここだぜ、てめえの目の前だ!」

その声は、間違いなく目の前の赤ん坊から発せられていた。

「な、なんだとぉー!」

「会話は隣の部屋の警部たちに筒抜けだ。罠を張って正解だったぜ!」

赤ん坊は不敵に笑い、茂木は状況を飲み込む前に警官に取り押さえられた。



卸屋不言。1歳と3ヶ月。最年少探偵として活躍する。今、世界でもっともヘビーなベビー


「あら、こんなところに、赤ん坊が」

鈴木幸恵が部屋に入ったとき、赤ん坊は、にっこりと笑った。

「可愛い……。こんな私にも微笑んでくれるの? う……う……でも私にはそんな資格なんかないの! 私は、恋人をとられたからって、親友を殺して……ごめんなさい! ごめんなさい!」

「謝るのはもう遅いぜ……だが償う事はできるはずだ」

低い声が、誰も居ないはずの部屋に響いた。

「誰! どこにいるの!」

「ここだよ、あんたの目の前だ。どうした、可愛い顔が台無しだぜ……」

鈴木幸恵は、一瞬驚きに動きを止め、赤ん坊に覆いかぶさるようにして泣いた。



先代のベビー探偵、卸屋イワノフ(32)は、息子についてこう語る。


「あいつは、私が15のときにやっと出来た事を、生まれて半月でやりとげた。間違いなく私以上の探偵になると思いますよ。親バカとかじゃなくてね」



卸屋イワノフは、結婚するまで現役ベビー探偵として難事件を解決し、異才の探偵として多くの探偵賞を受賞している。



探偵業についてどう思うかだって? おいおい、生まれて2年も経ってない赤ん坊にそれを聞くのかい? はっ、そんなのわかんねえよ。ダディーがいて、マミーがいて、ダディーは探偵だったが、俺も探偵だった。それだけだ。それだけでいい」




「別に俺は探偵をずっと続けるつもりはないぜ。俺自身はまだなんとも思っちゃいねえけど、マミーが心配してる。マミーにやめてくれって言われたら、俺はyesと言うだろうぜ。俺は泣くのが仕事だが、彼女を泣かせるような真似は流石にできねえ」


世界で最も不遜な赤ん坊は、そう言って肩をすくめた(ように見えた)。

トラックバック - http://throw.g.hatena.ne.jp/sasuke8/20070413