だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-04-27俺があいつで、あいつはあいつで

少年はみな洞穴をめざす

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その穴がいつからあったのか誰も知らない。昨日できたのかもしれないし、明日には無くなるのかもしれない。

ただ行き止まりなのは知っている。それでも、僕らはどうしてか、闇に向かっていく。

「何書いてるの?」

「うわぁっ」

僕は不自然な程狼狽してペンをとり落としてしまった。ペンは二三度跳ねてから、岩の隙間に落ちる。

「に、日記

「ふうん」

特に興味もなさそうに、名前も知らない女の子は、もう膝を抱えて別の方を向いている。僕は岩の隙間に手を入れてペンを取るふりをしながら、女の子スカートの中を見ようと試みた。


「穴に遇ったら入り隊」に志願した僕は、この名も無い洞窟の中に6時間程いる。全身から発光する特異体質のマッスルな先輩が一人いて、おかげで洞窟内は無闇に明るい。皆の真ん中で実に6時間ぶっ通しでポージングを続ける先輩を、僕はいろんな意味で直視できない。

で一応、僕らは遭難しているのだ。お、白?

「奥に行ってみない?」

「う! わ! あー……あ、危ないよ。きっと」

女の子は不審な僕には構わない様子で(救われた)、

「皆、外に出たいのか、ここに居たいのかよくわからなくなってるみたいだし」

「で、でも」

洞窟の奥には狼がいるかもよ。へへへ。

「大丈夫だって。あ、ペン?」

そう言うと女の子は岩にグバンと手を入れてペンを取り出した。それは、泥に手を入れるような気軽さで。一見してオアシスでもどんぶら粉でもなさそうだけど。純粋なる……。

「行こうか」

「はい」

黒くぽっかりと空いた女の子の双眸には、計り知れない何かがあって、僕は自然とあらたまる


どうして洞穴に向かうのか? それは何かを期待するからだろうな。

先の見えない暗闇に、なぜか光を見ようようとするから。



第十回萌理賞

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