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2007-07-24BEYOND THE TIME

平和より自由より正しさより

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その戦争の始まりは突然だった。誰にとっても、大統領だって、占い師だって、それは予想できなかったに違いない。その日、全世界女性達が、男性達に牙を剥いたのだ。女子小中学生も、女子高生も、女子大生も、主婦キャリアウーマンも、保母さんだって、メイドさんだって、お婆さんも赤ん坊でさえも、とにかく女性であれば皆、男性に襲いかかったのだった。それは比喩でも何でも無く、本当に牙を突き立てた者もいれば、金属バットで殴りかかった者、銃で撃ち殺そうとしたものもいる。様々な場所、様々な方法でそれは起こった。そこには何の思想も感じられなかった。ただ純粋な戦いがあった。力で勝るはずの男性達も、突然の出来事に対処できなかった。愛する恋人敬愛する母も、全てを敵だと認識して、反撃体制を整えるまで3ヶ月以上かかった。それは遅すぎた。この三ヶ月間での男性の死者は全体の25%に及んだ。


世界はもうムチャクチャだった。僕は気が狂いそうになっていた。

離れ離れになって三ヶ月、やっと会えた母は、僕の目の前でサブマシンガンを構えていた。そして、その銃口の先には父がいた。

「お父さん、やめてよ! ねえ、それ、お母さんなんだよ!」

「うるさい!」

「やめてよぉ! お父さん! お母さん!」

母はにこにこと笑っていた。それは、僕のテストの点が良かったときや、自分料理を褒められたときの、幸せそうな笑みだった。

タタタと乾いた音がして、僕の足元を銃弾がかすめた。僕は慌てて、瓦礫に身を隠す。空襲で僕の家は跡形もなくなっていた。久しぶりに帰った我家で、僕達は再会したのだった。

母は微笑んだまま僕達を見ている。それは普段と同じようでいて、しかし手に持った銃がそれを否定していた。

「お母さん!」

「黙ってろ!」

父が叫ぶ。父の目は血走っていて、僕は酷い恐怖を覚えた。それは、もう僕の家族は、なくなってしまったのだという孤独に対する恐怖だ。

父は、ぶつぶつと呟いている。

「俺は見たんだ。こいつは、こいつは」

「父さん!」

顔を出した僕を、再び母の銃が狙い撃った。僕は転がるように飛びのく。

その瞬間、父は叫びながら母に突っ込んだ。体当たりすると、母の腕を押さえ、一緒に倒れこむ。銃は母の手を離れ、地面を滑っていった。

母に馬乗りになった父は、荒い息で笑う。

「はぁ、はぁ、ざまぁ、みろっ!」

僕は動けなかった。父を止められなかった。

父は、母の衣服を破りとった。父は笑いながらナイフで母の着ているものを全て剥ぎ取ってしまう。露になる母の乳房、母の裸体。僕は目を伏せた。どうして、こんな事になったのか。どうして、こんなに狂ってしまったのか。僕の足元に、先程の銃が落ちている。僕はそれを拾うと、父に向けて構えた。

「父さん!」

父は、笑っていた。母さんの首を片手で押さえつけ、もう一方の手でナイフを構えている。

そして、母も、未だ笑みを浮かべたままだった。

「はははは、やっぱりだ。見ろ! これを、これが」

父は、ナイフの先を、母さんの陰部に向けている。初めて見る女性器は、ぬらぬらと濡れて、グロテスクだった。僕の手の力が一気に抜ける。

父がナイフを振りかぶった。僕は目を瞑った。ごめん、母さん。僕は勇気がない!

数秒か、数十秒か、数分かわからない。音は消えていた。静寂が辺りを支配していた。僕は目を開ける。

もう父さんはもう笑っていなかった。ぽかんと口を開けて、空を見上げていた。倒れた母さんも、笑うのをやめて、空を見ていた。

僕も空を見る。そこには、ぬらぬらと光る母さんのヴァギナが旋回していた。


父がぽつりと呟いた。

「俺は、見たんだ。あの日、母さんが、母さんのヴァギナが喋るのを」

僕は、ただ血と体液を撒き散らしながら、空を飛ぶヴァギナに見とれていた。そのせいで、いつの間にか母さんが起き上がり隣に立っていたのにも気付かなかった。

「行くのね」

母は、母のヴァギナに向かって喋っていた。

やがて、ヴァギナはその体をブルブルと震わせると、空に昇っていった。

やがて遠く、ヴァギナが点になったとき、三ヶ月前から晴れなかった黒雲が、ヴァギナを中心に晴れていく。

「な、何だ、あれは!!」

父が呻いた。僕は息を呑む。

そこには、太陽より大きな黒い星が見えていた。空は暗く、星は、禍々しい。

彗星よ。このままじゃ、地球にぶつかるんだって」

母は、空を見上げながら、呟いた。

僕と父は母を見た。母は、僕達を見て、微笑んだ。

「お前、あれは」

「ごめんね。私もわからないの。でも、一つだけ言えるのは……私達は助かったってこと」

空に変化があった。

黒い星の周りに、光が現れ始めた。それは、街に明かりが灯るように、少しずつ、やがて大きな光の帯のようになって、星を包み込んでいった。あれは飛んでいったヴァギナだ。ヴァギナ達だ。何故だか、直ぐにわかった。

戦争は、終った。


彼女達、彼女なのかどうかもわからないけど、あのヴァギナは、私達人類より先にこの地球にいたのかもしれない。そして待ってたんだと思う。私達から地球を取り返すのを。でも取り返すことより守ることを優先したのね。だから、私たちはまだ赦されたわけじゃないと思うの」


10年前に母が話してくれた事だ。彼女達はきっとまたくる。母はそう言っていた。僕は、あの幻想的な光の帯を思い浮かべていた。ベッドの上で、天井すれすれを旋回する、彼女のヴァギナを見上げながら。





デウス・エクス・ヴァギナ

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上のは、以下の作品インスパイアされてます。


デウス・エクス・ヴァギナ手法を使えば簡単にそれっぽくなるかと思いましたが甘かったようです。

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