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2007-08-19一生一緒にメガフレア

知らない(42/100話)

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友人のはてなダイアラーM君の話。


M君は会社勤めをしていて、独身貴族社会人ブロガーとして、はてなダイアリー日記を書いている。そこそこの読者を持ち、読者からたまにメールがくるくらいは人気があって、それなりに充実したブログライフをおくっていた。彼は、その当時マンションに一人で暮らしていたが、その日も、一人朝ごはんを食べながら、ざっとWebを巡回し、その後ノートパソコンの電源は落とさずに、蓋だけを閉じて、会社に向かった。日付が変わる少し前に、彼は帰宅し、疲れの中、コンポの電源を入れ、お気に入りのアルバムBGMとして流し、服を着替えると、買ってきたコンビニ弁当を食べた。一息ついて、彼はノートパソコンの蓋を開け、いくつかのブログを巡回する。日付が変わった頃、彼は今日日記を書くためにブラウザのお気に入りから彼のはてなダイアリーを開いた。いつもどおりのルーチン。しかし、いつもと違うことがひとつあった。彼のはてなダイアリーのヘッダにあるはずの「日記を書く」メニューがない。ログインしていないわけでもなかった。ヘッダには「ログアウト」メニューが表示されている。何度かページを更新するが変わらない。何か障害が発生しているのではないかと思った彼は、ヘッダからはてなトップページを開こうと目線を左上に上げ、そこで彼は「日記を書く」メニューが無いことの原因を知り、同時に新しい謎にも出会う。はてなダイアリーの左上には、ログインしていれば、ログイン名が表示されるが、そこには「ようこそ suterareさん」とM君のID名とは別のID名が表示されているのだった。知らないIDだった。はてな側でトラブルが起こっているのかと思った彼は、深く考えることなく、興味本位でその知らないIDクリックし、知らないIDダイアリーを開いた。


その最新の日記の日付は、今日(日付が変わる前)で、題名は「遺書」となっている。興味をひかれ、M君は本文を読んだ。どうやらsuterareは、女性らしく、その日の日記には、昔付き合っていた男への深い愛情と、もう戻れない日々と未来への絶望が切々と語られていた。気が滅入るような文章だったが、それと近い内容を彼が経験していたこともあって、ひきこまれて最後まで読んだ。その日記は、これから風呂場で手首を切って死ぬという文で終っていた。死にたい、死のうという言葉は、ブログではよく使われる。だが本当にブログを書いた人間が死んでいるとは限らない。そう思っていても気持ちが悪くて、M君は遡って彼女日記を見ることにした。過去日記を読みながら、M君は心臓の鼓動が早まっていくの感じた。息が止まりそうになり、喉の奥には苦いものがあがってきた。suterareの日記は、最新の日記に書かれていたような長文はほとんどなく、写真と数行の文章の形式で綴られていた。その写真には、自分の部屋から見える景色、部屋の中の様子などが写っている。彼はその全てに見覚えがあった。なぜなら、その部屋は、彼の部屋だったからである。

ベッドが、デスクが、台所が、洗面所が、彼女の暮らしを示す文章が添えられて、彼女の部屋としてそこに書かれている。彼は思わず辺りを見回した。見慣れたはずの景色に膜がかかったような違和感を感じ、冷たい汗が流れる。

そのとき音楽が止んだ。アルバムが終わり、CDが停止する。部屋に静寂が訪れ、そしてシャワーの音が聞こえてきた。


http://d.hatena.ne.jp/wonder88/00010101