だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-09-03酸味一体

やさしい花火のつくり方

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「綺麗……」

少年少女は並んで宙を眺めている。

少年は思い出している。目を合わせずに挨拶する少女。うつむいて廊下を歩く少女。おどけて笑わせて、喧嘩して泣かせて泣いて、支えて支えられて、過ごした日々。

「私も、散っていくんだなあ」

その声に悲しみの色はない。それが少年は悲しい。

「やめたっていい」

少年は搾り出すような低い声で言った。

「俺は別にやめたっていい」

少女は笑った。

「私はやだな。それに、そしたら私はまた石になるだけだもの」

「それだっていい」

「私は貴方に見て欲しい」

宙にまた大きく花が咲いた。鮮やかに、美しく、儚く、宙に溶けていく。

少年少女の目を見た。暖かく、優しい光。

「いい、花火師になってね」

そして、少女は、黒い穴の中に、その身を投げた。

炸裂音。遅れて、夜空に広がる光と音。

少年は、光の一粒までも逃さぬように、瞬きもせず、それを見つめた。


若き花火師は、この行事のために、擬人化した花火と一ヶ月間一緒に過ごす。彼らの過ごした時間と心の在り様が夏の夜空に咲く。




十三萌理賞 

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出し遅れた。

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