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2007-09-11因果の螺旋

因果探偵

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風が吹けば、人は死ぬのだ。



「あいつは死んで、当然だったんだ! そういう運命だったんだ! 俺は、運命に従っただけだ!」

喚き暴れる犯人を、警官が取り押さえる。犯人を突き止めた探偵は、その光景を暗い面持ちで見つめていた。刑事探偵に近づき、声をかけた。

「ご協力感謝します」

「いいえ、まだです」

「え?」

犯人はもう一人います」

探偵言葉に、犯人逮捕でほっとしていた広間に再び緊張が走る。

因果さん、それは」

探偵は、苦しそうに顔を歪め、刑事を見た。

「間接的に犯人に犯行を行なわせた人間がいます。証拠もあります。ですが、今の法では、その人間犯人にできない。殺意を立証できない限り、犯人を裁けない!」

探偵が黙り、そして、その場を静寂が支配した。

「聞きましょう。探偵さん」

意外にも、静寂を破ったのは被害者の妻だった。夫が殺され、息子がその犯人として逮捕されながらも、この女性は、この場にいる誰よりも落ち着いているように見えた。

探偵は、しばらく彼女を見つめた後、静かに語り始めた。

真犯人がしたのは、たったひとつだけです。彼、いや彼女自動販売機で缶ジュースを買った。そしてそこに、30円のお釣を置き忘れた。それだけで、今回の哀しい殺人は起こってしまったのです」

探偵言葉をきる。だが、誰も口を挟まない。誰もが探偵言葉を待っている。

自動販売機に残された30円はどうなったか? これは近所の小学生・菊池直哉君(9歳)が下校途中に拾いました。彼の趣味自動販売機等の釣銭口をあさることです。しかし真面目な彼は警察に届けようとした。だが、しかしそれは叶わなかった。彼はカツアゲされます。カツアゲしたのは近藤健(18歳)。菊池君が手で弄んでいた30円の小銭を冗談半分で奪い、近藤は川に投げ捨てた。しかし30円が投げ捨てられたその川には、泣きながら川に落ちた財布を捜す少女がひとりいました。名前は楠木ほのか(16歳)。彼女は、コケでぬめった川底の10円玉を踏み、転倒。パニックになった彼女は膝上程の川で溺れかけます。彼女を助けたのが、丁度通りかかった木下玩具の営業マン・真下雄介(28歳)。一回り離れた彼女と彼はやがて恋に落ちました。実る恋あれば破れる恋あり。佐藤圭(17歳)は密かに幼馴染である楠木ほのかに恋心を抱いていました。そう、彼はこの事件の実行犯です。しかし、佐藤圭はその恋心を、彼女幸せを想い、封印します。しかし、彼女の思いを寄せていたのは彼だけではなかったのです。それが、佐藤圭の父親であり、事件の被害者である佐藤盛吉(53歳)。佐藤盛吉は楠木ほのかの恋人存在を知ると、怒り狂いました。そして、我を忘れた彼が楠木ほのかを呼び出し暴行しようとした所を、佐藤圭が見つけて、今回の事件が起こってしまったのです」

探偵の説明が終った。しかし、誰も喋ることができない。何を言えばいいのかわからない。

「全ての人間から証言はとってあります。10円玉も回収しています。しかし」

「それじゃあ、犯人は捕まえられない」

言葉をついだのは被害者の妻・佐藤頼子

探偵彼女を睨みつけ、そして懇願するように言った。

「お願いです。自首してください」

「おことわり」

佐藤頼子探偵を睨み付け、そして笑った。佐藤頼子は、踵を返し、部屋を出て行く。

「だって、私は犯人じゃないもの」

あなたの言う通りなら、因果の元はあの人だもの。彼女の呟きは探偵達には聞こえない。


佐藤頼子が部屋を出て行き、刑事の指示で、佐藤圭が連行される。

佐藤頼子の出て行った方を見つめ続ける探偵。見かねて刑事は声をかける。

律子ちゃん」

「おじさん、私は、これほど、自らの力の無さを呪ったことはありません」

「いや、君はよくやったよ。それはむしろ我々の……いや誰のせいでもない」

「いえ、私は、私は」

刑事は、姪っ子の肩に手を置く。犯人は捕まったのだ。しかし、忌わしい事件に終止符を打った探偵自身が、小さく震えて泣いている。

「お互い因果な稼業ってことか……」

若き探偵因果律子のこの涙が、やがて起こる未曾有の大事件の解決に繋がる事を二人はまだ知らない。

刑事の呟きは風に消えた。いや、その呟きは風に乗って、やがて、次の死者を出すことになるのだが、それはまた別の因果

sasuke8sasuke82007/09/12 23:22ブックマークのコメントにもありましたが、既に探偵アカシック・レコードは探偵百傑に入ってました……。(しかも読んでた)

http://yarukimedesu.blog19.fc2.com/blog-entry-1109.html

二人の良く似た探偵が、いずれ出会うのかもしれませんねえ……。とだけ言っておきましょうか……。