だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2007-11-12カニ味噌塗りつけ叫んでよ、心のギターで弾いてよ

どこからもこない

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長飛魚直樹の敗北、引退。そして、膝カックン冴子の死。スパッツ原田は激動する己の人生に戸惑っていた。これまで憎悪にも似た怒りのただ中に自らを置き、ひたすらに抗う事で生きてきた原田にとって、心の奥からしんしんと流れてくる静かな哀しさは生まれて初めて経験するものであった。スパッツ原田は道を見失っていた。


スパッツ原田はいつもの土手に座り、目の前を流れるロンダル☆キア大川を眺めている。風はいつのまにか肌寒い程になっていて、冬の到来を感じさせた。

「スパッツいっちょで、風邪引くぞ」

膝カックン冴子の声が聞こえて、スパッツ原田は振り返る。

なんだ、そこにいたのか。お前は何時も背後にいるな。

「これは、黒タイツだっての。ただ、切って短くした、だけ……」

声は誰にも届かなかった。そこにはやはり、誰も居ない。

スパッツ原田は俯いて、目を閉じた。奥歯をぎっとかみ締める。そうしないと、体の奥から何かが溢れてきそうだった。


「無様だな。スパッツ」

顔を上げると、いつのまにかそこには、柔道着を重ね着したスパシーボ甘口がいた。

「スパシーボ……」

「情けない声を出すなよスパッツ! お前に負けた俺が、必死にお前を越えようと思ってるのに、目標がこんなんじゃあよ……萎えちまうぜ」

スパシーボ甘口は心底苛立たしげに、はき捨てた。そして柔道着を一枚脱ぐ。

スパッツ原田は、スパシーボから目をそらした。

「すまん」

「はァ!? どうしちまったんだよ、お前。何で謝るんだよ。殴りかかって来いよ。オラ!」

かつてのスパッツ原田なら、ライバルの挑発に激昂し、なりふり構わず向かっていくところだった。しかし、今のスパッツ原田は、ライバルに情けない姿を見せる自分に苦い気持ちを抱きながらも、立ち上がることは出来ない。

スパッツ原田は代わりに、自嘲の笑みを浮かべ呟く。

「ほんとに、今やったら、負けるだろうな」

「……どうしようもねえな。てめえは。マジで萎えるぜ……これを持ってけ!」

スパシーボ甘口は、脱いだ柔道着を、スパッツ原田に向かって投げつける。

「アマグチコンツェルンが開発したドラゴンレーダーだ。早くテメエの望みを叶えてこい。今のテメェなんかと闘う気はしねえ」

そう言い捨て、スパシーボ甘口は、走り去っていった。

スパッツ原田は呆然としてそれを見送った。

「あの柔道着の量、この汗。あんなに努力が嫌いだったあいつが」

スパッツ原田は、心の底から沸々と湧き上がってくる何かを感じていた。それはもう悲しみでも絶望ではない。

スパシーボ甘口がくれたドラゴンレーダーを見る。そこには町内の地図と、明滅する7つの点を映し出されていた。それを記憶に焼き付ける。

ありがとう、と心の中で呟いた後、柔道着の余りの臭さに顔を歪めて、柔道着をロンダル☆キア大川に投げ捨てる。そして、スパシーボ甘口とは逆方向に向かって走り出した。

これで、XBOXが手に入るぜ!

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