だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-01-24存罪

確認

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まず最初に確認しておこう。僕の名前は十倉克彦。どこにでもいる普通の男子高校生。成績は中の上。運動も中の上。サッカー部に所属。だがサッカーは下手。血液型はB型で、星座は射手座。好きなタイプの女の子は……って何で一人で喋ってんだろう。僕は馬鹿か。いやいや、こういうのが大切な事なんだ。きっと。

そんな普通の僕だけど、最近困った事件に出くわした。同じクラスの皆森千里がストーカー被害に遭ったのだ。皆森千里は可愛い女の子だけど、目が見えない。その恐怖はいかばかりだったろうか。僕にはわからなかったが。

でも第三者であるこの十倉克彦が関わる事で、ストーカーは行動を焦り、映画の決闘のような事件を起こして、警察に捕まった。


そして全部終わって一週間。今、僕は皆森千里の家を訪ねている。

インターホンを押すと、彼女の可愛い声がする。

「誰?」

僕は思わず微笑む。僕だよ。

「十倉だよ」

「十倉、君?」

心細い、不安げな声が返ってくる。何でだろうと、少し考えて、自分の声の低さに気付いた。

「風邪引いちゃって。咽喉の調子が悪いんだ。ほら先週、あいつと池に落ちただろ」

トットッと歩いてくる音がして、扉が少し開いた。まだ不安そうな皆森千里の顔が見える。

「大丈夫?」

声から、彼女の不安が、扉の前に立つ人間に対する不信からではなく、僕の体の心配によるものだと気付く。

僕は笑って言う。

「入っていい?」

彼女はコクリとうなずいて、チェーンをはずした。

「今、お母さんいないの」

実は知っていた。でもそれなら簡単にチェーン外したら駄目だろうに。信頼されているということか。少し複雑な気分だ。そんな事を考えながら、靴を脱ごうとしたら、バランスを崩した。

「おっと」

声に気付いた彼女が振り向き、手を伸ばした。思わずその手につかまる。

手が触れ合って、僕らの時間は一瞬止まる。

「あの日からずっと言えないでいたんだけれど」

直ぐに彼女は手をひっこめた。その仕草がとても可愛くて、次に言葉を継ごうとしたとき、彼女が小さく言った。

「あなた、誰?」


「十倉君の手と違う」

想定外。手か。少し触れただけでわかる程、あいつの手を覚えてたのか。用心深い君が、名前を言っただけで扉を開けてしまう程、あいつは。

僕は心がまた闇に沈みそうになるのを振り払う。もう関係ないのだ。もう迷う必要は無い。十倉克彦はもういない。僕は微笑む。言葉を紡ぐ。

「確認しよう。僕は君を愛してる……君は?」

僕の言葉に彼女の身体がびくりと震える。その仕草がとてもとても可愛くて、僕は。

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2008-01-23南国志演義

偉大なるハメハメハ

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ハメハメハ王国からの留学生ハメハメハ君が、母国語混じりで、彼の鉄板ネタを教えてくれた。

「ハメハメハに住んでた頃、こう見えて僕、ハメハメハしてたんですよ。そのときはちょうどハメハメハなハメハメハで、僕それでハメハメハにハメハメハっちゃって。えーと、こっちでいうと、何ですかね。やっぱりハメハメハですね。でもとうとうハメハメハすることになったんです。もうハメハメハってハメハメハで。僕のハメハメハはハメハメハしてましたよ。そんでハメハメハ的にハメハメハだったんで、ハメハメハーってなってたら、なんとハメハメハもハメハメハで、結局、皆ハメハメハなハメになってとにかくハメハメハというわけです」

僕が笑って「それはハメハメハな話だね」と言うと、彼も嬉しそうに「そうです」と言って笑ったので、調子に乗って「ハメハメ~」と言うと今度は怖い顔された。

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2008-01-15奇に飢えた男

木を植えたら男

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同窓会の後、酔っ払った俺達は、20年前に埋めた記念樹を見る為に、卒業した小学校に忍び込んだ。懐かしい中庭の隅には、平成元年卒業生寄贈と書かれた立て札があって、その側に全裸の中年男性が恥ずかしそうに生えていた。

「久しぶり」

酔いが一気に醒めた。


男は股間を手で隠し、足をくるぶしまで地面に埋めて、背筋を伸ばして立っていた。もちろん、こんなのを埋めた覚えは無い。

「そんなジロジロ見ないでよ」

男は、恥ずかしそうに言った。

「お前、何してんだよ」

傍らの友人Aが、とりあえず聞いた。そういや口火を切るのはいつもこいつだった。頭は悪いけども、確信を突く奴だった友人A。とにかく、友人Aは俺達の記念樹にあるべきところに立っている全裸の中年を人間と認識したようだった。当たり前だけれども。

男は答えた。誇らしげに。

「光合成」

「ウソつけよ。葉緑素が見あたらねえよ」

即座に否定され、男は泣きそうな顔をする。しかし、男は気を取り直し、少し怒ったように反論した。

「葉緑素がなければ、光合成できないというのは、教科書丸覚えの学校教育の生んだ歪みだね。だって、現実に僕は葉緑素なしで、光合成できるんだから」

「じゃあ、やっぱり植物じゃないんだな」俺は一応確認しておく。男は薄く笑って言った。

「何が植物を規定するんだろう。そりゃあ、学者の人は学術的な定義をしているのだろうけど。そんなもので、植物を定義していいのかな。僕の人生はまるで植物のようだったよ。中庭の隅で、風に揺られて、土から養分をもらって、時には雨を体にうけて、そして何より僕はずっと二酸化炭素を酸素に変え続けていた。エコだよ、これは。誰が何と言おうと、僕はこの世の誰より植物だった」


遠くを見る目で語りだした男の前で、俺達は言葉を探している。男は、俺達が聞き入っていると勘違いしたのか、姿勢を正し、心なしか眉をきりりとさせて、語り続けた。

「ある日、児童たちが僕が植物じゃないんじゃないかと疑いだした。今の君達のようにね。そしてついに教職員がPTAの圧力をうけて僕を調べに来たんだ。焦ったよ。僕は追い詰められた」

「いや、植物なんだろ、あんた」と友人Bが呟いた。

率直で、思った事を口に出す友人B。聞き流しても良いこんな話にも相槌をうつ優しい奴だった。

「ああ、植物さ。しかし、そのときの僕はまだ光合成はできなかった。そんな僕に対して、あの頭の、カチンコチンに固まった、いや、いやらしい意味じゃなくてね」

頬を赤らめるな!

「物事に真剣に取り組む心も力も失くした大人達が考える事なんて直ぐにわかる。彼らは考えもしないだろう。一目見て、僕が、変質者か何かだと判断するに違いない、とね。そして、追い詰められた僕の精神は」

友人Bが「吐いてくる」と言って校舎の方に向かった。「あ、俺も」「俺も行くわ」「じゃあ、僕も」

「お前は来るなよ!」

20年ぶりに俺達の声がハモった。いや、20年前にハモった事があったか忘れたけれど。


「ま、待ってくださいよ! 話を聞いてくださいよ」

男は慌てて取りすがろうと手を伸ばしてくる。股間があらわになる。

「いいよ、もう」

俺は、服の袖をつかもうとしてきた男の手を振り払う。俺は酔いが醒め、寒さのおかげで現実を取り戻してきていた。これ以上この件に付き合っていても良い事はなさそうだと大人になった俺達の脳は判断したのだ。

「酔っ払ってみた幻覚だ。お前は」

「いやもう酔ってないって言ったでしょ!あなた!」

「そんなこと言ってねえよ。モノローグを読むな、変態。それに本人が酔ってないというのが一番危ないんだ。通報しないでやるから帰れ変態」

「あんた、失礼だな!」

「深夜に小学校で全裸になってる中年に礼儀がどうとか言われたくない」

そう、5人の中で一番口が悪いのは俺だった。つい、口が過ぎて、一番気の弱かった友人Cを泣かしていたのは俺だった気がする。そう、気が弱く、それでも俺達の仲間になりたくて、いつも後ろをついてきた友人C。記念樹を埋めたあの日も……あ。


「あ」

俺の声に先を行くA、Bの歩みが止まった。俺の頭が高速回転する。記念樹を埋めたあの日、Cに言った軽い一言。「なあC、お前もここで埋まっててくれよ。迎えに来るからさ」

もしかして、もしかして、

「お前、まさか……」

俺の言葉に、中年の男ははっとして顔を伏せた。

俺は必死に、Cの顔を思い出そうとした。そして、目の前の男と重ね合わせようとする。

「あのとき、俺が言った言葉を、そのまま守ってたのか? こんな、オヤジになるまで、服がなくなって、全裸になって、頭が禿げ上がって、自分の事がわからなくなるまで、ここに、お前……Cなのか」

俺の言葉に男は答えず、代わりにBが答えた。

「いや、Cは去年結婚してたし違うだろ」

それに、Aがうなずきながら補足する。

「うん。結婚しましたハガキに写真載ってたけど、顔全然違うし。大体、歳が合わねえよ」

俺は、冷静な二人の顔を見つめて、しばらく停止していた。

「お前のところも来ただろ。年賀状。あいつ、クラス全員に出してるっぽいから」

友人Bの言葉に、ようやく言葉を搾り出した。

「だよな」

俺の所にハガキはきていない。


「や、やりました!」

そのとき、中年男が叫んだ。

もういいよ、と投げやりに、俺が振り向くと、全裸の男が飛び跳ねていた。何か見てはいけないものを見た気がした。そこで、友人Bは吐いた。

男は俺達の視線に気付き、近寄って握手しようとしてきた。俺は咄嗟に避けたが、代わりに友人Aが手を掴まれた。

「見てください。ついさっき、気付いたんですが、僕今歩いてるんです。地面から、足……いや根を出して、歩いてるんです。どうやったのか覚えてません。無我夢中であなた方を止めようとしたとき、奇跡が! 大ニュースですよ! ついに植物が歩いた! 二足歩行植物の誕生なんです。新時代の幕開けなんです」

男は興奮して、友人Aの手をぶんぶんと振った後、「エウレカ!」と叫んだ後、走り去って行った。

俺たちは、男が夜の闇に溶け込むまで見送り、そこで解散した。


二三日して、新聞に小さく俺達の小学校の記事が載った。

××小学校の卒業記念樹が掘り起こされる事件が起こった。

その日、酔っ払って騒いでいた男達を近所の住人が目撃しており、酔っ払った卒業生の仕業ではないかと警察は見ている。

真実は小説より奇なり。メディアの言う事を鵜呑みにしてはいけない。俺はまた学習した。

あと、友人だったCから結婚通知ハガキがきた。マジックで、「遅れてごめんな」と書かれていた。Bが俺の様子を見て、気付いてCに連絡してくれたのかもしれない。優しい奴だ。あいつは、昔から。

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2008-01-04あけましてくれたっていいじゃない

魔法少女探偵

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今日も今日とて人は死ぬ。

若い刑事は、重苦しい顔で死体を見つめる男に声をかけた。

「警部、やはり殺しでしょうか」

「これは迷宮入りだな……」

「え、もうですか」

敏腕警部の弱音は風に乗り、娘である南亜沙子のところに届く。

亜沙子は大好きなプリンを食べながら、推理小説を読んでいたが、父の苦渋に歪んだ声と顔を受信して、立ち上がる。

「たっいへーん! お父さん、待ってて!」

亜沙子は慌ててプリンを流し込むと、二階に上がり、魔法のクローゼットを開ける。そこには魔法のインバネスコート風ワンピースと、それと同じ柄の帽子が入っている。

「へーん、しー!」

南亜沙子は魔法少女である。魔法の国からやってきた不思議生物の密室殺人事件を解決した事から、魔法の国の不思議生物から魔法少女探偵の力を授かったのだ。

「説明サンキュっ。地の文さん! おかげで変身できたよー!」

いつのまにか、魔法少女の手には巨大なパイプ型ステッキが握られている。

「よーし、お父さんのところにワープ!」

亜沙子がステッキを振ると、ステッキの先端から煙が噴き出す。煙は亜沙子の周りを取り囲んだ。小さな少女は煙に撒かれ、押し上げられていく。「ああ、頭がスッキリするー!」そして、煙が晴れたとき、少女の姿はそこにはなかった。


「よし、帰るぞ」

「捜査しましょうよ、警部!」

「無駄だ。不思議のラビリンスだよ。1000回捜査しても無理さ」

若い刑事と父が揉めている現場上空に、亜沙子は浮かんでいる。

「いけない。お父さんが困ってる!」

亜沙子は、ステッキを振る。

「マジカル、カルイシ、イシカワ、ゴエモーン! 声なきものよ、犯人を教えて!」

ステッキから煙が噴出し、現場を包み込む。

「な、なんだこれは」

「け、警部!」

「私、犯人を見ました」

声がした。その場にいる誰とも違う声。

「だ、誰だ」

「犯人は、頬に傷を持ち、前歯が一本差し歯の男。眉が薄く、頭髪も薄い。声は低く、九州の訛りを感じました」

声はべらべらと犯人の特徴を述べていく。そして、若い刑事は見た。新しく、現れた男を。被害者の死体が起きて喋っていた。


現場が煙に撒かれた事で、本当の怪異は若い刑事以外は目撃することはなかった。ただし、周囲が見えなくなる程の煙に現場にいた人間は軽いパニックに陥ったが、煙を吸った人間は警部と若い刑事を除いて直ぐに気を失った為、大事にはならなかった。

「よーし、仕上げね! マジカル・カルガモ・ガモウヒ・ロシアン・ルーレット! 犯人になぁーれ!」

そして、魔法少女はリズミカルにステッキを振った。また別の煙が現場を覆い、その煙が晴れた時、警部の前には、頬に傷を持ち、前歯が一本差し歯で、眉が薄く、頭髪も薄い男が現れた。男は、低い声で言った。

「あれ、警部。どげんかしたとですか?」


亜沙子は男が逮捕されるのにこにこして見届ける。亜沙子は父が犯人に手錠をかける瞬間が好きだった。

「あの犯人の人、いい顔するなぁ……」

「亜沙子ちゃん!」

空中に浮かぶ少女に声をかけるのは、魔法の国のオランウータンだ。

「エド! どうしたの?」

「お母さんが、食べかけのプリンを見つけちゃったよ」

「いっけなーい! お母さんの分食べたのばれちゃうー!」

亜沙子は慌ててステッキを振る。無敵の魔法少女探偵は、とにかく忙しい。

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