だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-01-04あけましてくれたっていいじゃない

魔法少女探偵

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今日も今日とて人は死ぬ。

若い刑事は、重苦しい顔で死体を見つめる男に声をかけた。

「警部、やはり殺しでしょうか」

「これは迷宮入りだな……」

「え、もうですか」

敏腕警部の弱音は風に乗り、娘である南亜沙子のところに届く。

亜沙子は大好きなプリンを食べながら、推理小説を読んでいたが、父の苦渋に歪んだ声と顔を受信して、立ち上がる。

「たっいへーん! お父さん、待ってて!」

亜沙子は慌ててプリンを流し込むと、二階に上がり、魔法のクローゼットを開ける。そこには魔法のインバネスコート風ワンピースと、それと同じ柄の帽子が入っている。

「へーん、しー!」

南亜沙子は魔法少女である。魔法の国からやってきた不思議生物の密室殺人事件を解決した事から、魔法の国の不思議生物から魔法少女探偵の力を授かったのだ。

「説明サンキュっ。地の文さん! おかげで変身できたよー!」

いつのまにか、魔法少女の手には巨大なパイプ型ステッキが握られている。

「よーし、お父さんのところにワープ!」

亜沙子がステッキを振ると、ステッキの先端から煙が噴き出す。煙は亜沙子の周りを取り囲んだ。小さな少女は煙に撒かれ、押し上げられていく。「ああ、頭がスッキリするー!」そして、煙が晴れたとき、少女の姿はそこにはなかった。


「よし、帰るぞ」

「捜査しましょうよ、警部!」

「無駄だ。不思議のラビリンスだよ。1000回捜査しても無理さ」

若い刑事と父が揉めている現場上空に、亜沙子は浮かんでいる。

「いけない。お父さんが困ってる!」

亜沙子は、ステッキを振る。

「マジカル、カルイシ、イシカワ、ゴエモーン! 声なきものよ、犯人を教えて!」

ステッキから煙が噴出し、現場を包み込む。

「な、なんだこれは」

「け、警部!」

「私、犯人を見ました」

声がした。その場にいる誰とも違う声。

「だ、誰だ」

「犯人は、頬に傷を持ち、前歯が一本差し歯の男。眉が薄く、頭髪も薄い。声は低く、九州の訛りを感じました」

声はべらべらと犯人の特徴を述べていく。そして、若い刑事は見た。新しく、現れた男を。被害者の死体が起きて喋っていた。


現場が煙に撒かれた事で、本当の怪異は若い刑事以外は目撃することはなかった。ただし、周囲が見えなくなる程の煙に現場にいた人間は軽いパニックに陥ったが、煙を吸った人間は警部と若い刑事を除いて直ぐに気を失った為、大事にはならなかった。

「よーし、仕上げね! マジカル・カルガモ・ガモウヒ・ロシアン・ルーレット! 犯人になぁーれ!」

そして、魔法少女はリズミカルにステッキを振った。また別の煙が現場を覆い、その煙が晴れた時、警部の前には、頬に傷を持ち、前歯が一本差し歯で、眉が薄く、頭髪も薄い男が現れた。男は、低い声で言った。

「あれ、警部。どげんかしたとですか?」


亜沙子は男が逮捕されるのにこにこして見届ける。亜沙子は父が犯人に手錠をかける瞬間が好きだった。

「あの犯人の人、いい顔するなぁ……」

「亜沙子ちゃん!」

空中に浮かぶ少女に声をかけるのは、魔法の国のオランウータンだ。

「エド! どうしたの?」

「お母さんが、食べかけのプリンを見つけちゃったよ」

「いっけなーい! お母さんの分食べたのばれちゃうー!」

亜沙子は慌ててステッキを振る。無敵の魔法少女探偵は、とにかく忙しい。

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