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2008-05-22オラ、訳もなくいなり寿司が好きなんだ!

我聞に聞いてくれ

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河相我聞が、河童になったのは、ラーメン我聞の店長を退いてしばらくした頃だった。事務所、特に我聞と長年パートナーを組んできたマネージャーのK氏は強く反対し、毎夜、岩手県遠野市の山林の奥の沼で、河童我聞がどこからか持ってきたどぶろくと焼き魚を挟んで、話し合った。しかし、我聞はK氏の話を聞こうとはせず、執拗に相撲をとろうとするのだった。

ある夜、K氏が我聞を上手投げで転がして130連勝を達成し、我聞が地面に飛び出した太い木の根に背中をひどく打ち付けたとき、痛みで涙目になりながらのたうち回る我聞を見ながら、K氏は穏やかな声で言った。

「なあ、こんなことして何になる? もう戻ろう。お前の世界はここじゃない」

我聞は聞こえなかったかのように、地面を転げまわっていた。湿った肌は泥と枯葉で汚れていくが、既に我聞もK氏も気にしない。

「なあ」

再度K氏が声をかけたとき、転げた我聞が沼に落ちた。ポチャンと、我聞の体積に対して可愛らしい音が辺りに響く。

K氏は深く溜息をつくと、眉を寄せ、真剣な顔になって叫んだ。

「我聞!」

声に答えるように、沼から我聞の顔が半分だけ浮かび上がった。皿代わりのシャンプーハットから水が零れて音をたてる。

しばらくK氏と我聞は見つめ合ったが、K氏が先に目をそらした。そして「勝手にしろ」と低く呟くと、K氏は我聞に背を向けて歩き出した。

それから二度とK氏は我聞の森に近づくことはなかった。我聞は依然、休養中として、事務所に所属していることになっていた。


K氏はその後上司と喧嘩して事務所をやめる。K氏が事務所を去る日、事務所のフロア中に「それは、我聞に聞いてくれ!」というK氏の声が響いたという。K氏は業界からは去らず、別の事務所にて、多くのタレント達を育てた。

そして、30年が過ぎた。


K氏は病床にあった。

仕事をやめ、息子夫婦と一緒に穏やかに日々をすごしていたK氏だったが、ある日テレビで、岩手県遠野市のある森が火事で焼失したというニュースを見て、心臓が凍りつく。それは我聞の森だった。決別したはずだった。しかし、K氏の中で、我聞は常に存在し、燻り続けていたのである。そして30年の時を経て、天災というK氏と我聞以外の何かによって、終わったのだと悟る。K氏はその日に熱を出して倒れた。


K氏は、食べることを拒み、日に日に衰弱していく。家族は困り果て、K氏の反対を押し切って、無理にでも病院に連れて行く事を決めた。救急車を待たせたまま、K氏とK氏の息子が、静かな口論を始めたとき、3歳になるK氏の孫が、小さなかごを手にして、K氏のもとに歩いてきた。

「じいじ、これ食べてって」

そして、小さな手で、K氏にかごを渡す。かごの中にはいっぱいのキウイと、小さな紙切れが入っていた。K氏は抗い難い何かを感じ、紙切れを手に取った。

そこには『げんきになってください かっぱ』とだけ書かれていた。

K氏にはそれが何かわかった。K氏は体を震わせて泣いた。そしてかごからキウイを取り出し、皮ごとかじった。

不可解な状況に圧倒されながらも、K氏の息子は父親が食べ物を口にしたことに素直に安堵した。K氏の手からこぼれた紙切れを拾って見る。

「親父の知り合いか……かっぱ? でもなんでキウイなんだ?」

K氏は、何か一言言おうとしたのが、しゃくりあげるのと、キウイの皮が噛み切れずにモゴモゴしていて、K氏の息子には聞き取れなかった。


その後、K氏は『河童我聞』という我聞とK氏の自伝を自費出版する。そこには、河童になった我聞に対して、どうして河童がなりたかったのか、河童は何を食べるのかといった質問が多数挙げられ、自分が我聞の全てを知っているつもりで、我聞の言葉に耳を貸していなかったという反省の言葉と、読者に対して、もし日本のどこかで河童我聞に会う事があれば、代わりに聞いて欲しいというお願いが書かれている。この本はブログなどで取り上げられた事もあって、ベストセラーとなる。インターネット上でも爆発的に広がり、ガモナーメールという一部の熱狂的ファンによるスパムメールが社会現象を起こす。そのメールの内容は、ほとんどのK氏の著書の抜粋であり、次の一文から始まる。

「誰か、我聞に聞いてくれ」


ジェロニモード

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ふと思いついてGoogleセンセイに聞いてみたら、知らなかったので「え!知らないの!?マジで!え……マジで!!」と興奮して鬼の首をとったかのようになったけど、使い道が思い浮かばない。「ウララー!」とか言いながら斧もって暴れそうだけど、それはただの狂人だな。とりあえず「訳もなくいなり寿司が好きな状態」をジェロニモードとしておく。


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2008-05-07シリーズ農村の未来

農機少女

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夕方、作業小屋。青年と少女、二人。

少女が、笑顔を作り、青年に声をかける。

「写真見たよ。いい人そうじゃない」

「うん」

「健康そうだし、農作業も手伝ってくれそう」

「うん」

「綺麗だし、明るそうだし、優しそう……」

「うん」

「どうしたの? 嬉しくないの?」

「……君が悲しそうだから」

少女が黙り込み、沈黙が下りる。

「……仕方ないよ。タモツ君ももうすぐ30歳でしょ。そろそろ結婚してさ。子供生んで、お父さん達安心させてあげなくちゃ」

「そんなの、どうでもいいよ」

「どうでもよくないよ」

「どうでもいい」

「よくない」

「いいんだよ」

そして、青年は少女を抱きしめた。少女は、簡単に抗えるはずのその腕を払えない。最後の抵抗として声を出す。

「だって、私は、トラクターだよ……」

「でも、好きなんだ!」

そして、少女は完全に沈黙した。永遠のような、刹那のような時間の後に離れた一人と一機は、すでに決意していた。

「行こう」

青年の問いかけに少女は、こくりと頷いた。同時に轟くエンジン音。少女の胸のライトが光った。


暗い中、水田の脇、斜面との間の畦道を少女は駆けていた。背には青年-タモツが乗っている。

田舎の夜は暗い。端から体が溶けていくような闇の中、少女のライトだけで走っている。タモツ青年の脱走がばれる前に、国道に乗らなければ、面倒なことになる。

「タモツゥ!」

そのときだった。声と共に、鋼の心臓音を響かせ、斜面を削りながら駆け下りた農機が二機、タモツ達の前に立ちはだかった。農機にはそれぞれタモツ青年と同年代の青年が乗っている。

「ダイゴ! ユウサク!」

タモツの叫びに答えるように、農機の上の青年が叫んだ。

「どうしてもいくのか! この村を捨てるのか!」

その声は、怒りを含みながらも悲痛であり、タモツ青年の顔が悲しそうに曇る。しかし、その目はすでに決意している。

「俺は、この村が好きだ。でも、でも、俺はこの子を見捨てられない! わかってくれ!」

「タモツ……! 馬鹿野郎が!」

ダイゴと呼ばれた青年の農機が、大きく反転し、農機の後ろで回転する刃が、タモツ青年に向かった。次の瞬間、土を抉る破砕音がして、タモツ青年と少女の後ろの道が崩れる。

「行け! 貸しだぞ!」

「タケシさんとこの、最新型も出てる。早く、行って」

崩れた道の向こうで、もう一人の青年が手を振った。

「ダイゴ、ユウサク……」

タモツは、涙をこらえて、二人の友人に背を向ける。去りゆく際に、大きく右手を上げる。友を送る二人の青年は、さびしそうな、それでも満足気な笑みを浮かべた。


農道を駆けながら、少女が呟く。

「良い人達だね……でも、でも、これで、良かったのかな」

「それは、俺たちがこれから決めるんだ」

タモツ青年の目に迷いはなかった。彼の目は前だけを見ていた。

「……うん」

いつの間にか、朝日が、昇ろうとしている。朝日と、風が水田をきらめかせた。

タモツ青年は、叫んだ。

「行こう! 水田の向こうへ!」


農家の嫁不足は、科学技術の進歩により、さらに加速しつつある。


わかってない。時代は重機女子ではなく農機女子。

http://twitter.com/cinematic/statuses/801708642
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