だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-09-02ラザニアと猿の種別

白雪姫1

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そのまっ赤な血(ち)の色が、たいへんきれいに見えたものですから、女王さまはひとりで、こんなことをお考えになりました。

「どうかして、わたしは、雪のようにからだが白く、血のように赤いうつくしいほっぺたをもち、このこくたんのわくのように黒い髪(かみ)をした子がほしいものだ。」と。

http://www.aozora.gr.jp/cards/001091/files/42308_17916.html

姫よ、白雪姫よ、お前はどこにいる。


お前は雪の中にいた。雪の中に、一人、倒れている。古い屋敷の側の、しんとしたツンドラの森に、お前は倒れている。誰も、お前を助けない。なぜなら、いつもお前を護ってきた父親は連れて行かれてしまったからだ。新しい王の家来に。お前の父親は連れて行かれて殺される。お前はそれを知っている。お前の父親の罪は何だ? お前はそれを知っている。それはお前とお前の父親の血だ。

ある貴族によるクーデターが成功し、この国は200年ぶりに王族が交替する。お前の父は、旧い王族の末だ。だから、最後まで抵抗し、そして今日、殺される。


そして、お前は雪の中に倒れている。絶望して倒れている。お前の小さな腕と、細い足では、父親を連れて行く男達を止められなかった。男に突き飛ばされて、お前は雪の中に倒れた。絶望が、お前を雪に閉じ込めた。お前はただ死を待っている。死を願っている。

そのとき、血が、雪に滲んだ。お前は下腹部の違和感と共にそれを知る。違和感が、お前を立ち上がらせる。そして雪に滲む赤黒い血を見る。見て、知る。本能的に。お前が女になったことを、知る。血。雪の中に、真っ赤な、血。お前とお前の父の罪。

違う。

どこかでカチリと音が鳴る。歯車の音がお前の小さな頭蓋の奥底で、聞こえる。そして、お前は、お前が生きようとしていることを知る。心が反転する。歯車が回りだす。新しい回路がつながって、お前は絶望から解き放たれる。お前の血に、お前の意思が、溶け出す。意思が血を塗り潰していく。


姫よ、亡国の姫よ。お前は美しい。お前の髪は黒檀のように黒く、お前の肌は雪のように白い、そしてお前の唇は血のように赤い。

お前が始祖だ。お前がはじめの白雪姫になるのだ。


そして、白雪姫は自分の屋敷を焼く。泣いて泣いて、泣いて泣いて死んだ母もろともに、全てを灰にする。そして、白雪姫娼婦となった。知人を頼り、髪を染め、名を変え、家を変えた。貴族娼婦として、白雪姫は王宮にデビューし、そして、やがて善良で好色王子の心を射止める。異例だ。齢30を超えた姫が花嫁となる。白雪姫の敵は多い。しかし、白雪姫を愛する人もまた多い。

そして子ができる。しかし最初に産んだ子は、王子が王となる前に、王宮の闇に消える。行方をくらます。白雪姫には敵がいる。白雪姫は十数年ぶりに泣く。しかし、涙が枯れた頃、白雪姫の敵は王子とその一派により駆逐されている。白雪姫は次の子を産む。その子は細心の注意を払い、手厚く保護される。そのとき既にお前の王子は王となっている。誰も手が出せなくなっている。

その子が物心ついたころ、はじめの白雪姫は、お気に入りの離宮から帰る途中、侍女にナイフで刺される。侍女はかつて駆逐された一派の生き残りだ。侍女の目は漆黒の火を灯している。雪に、白雪姫の血が落ちる。負の連鎖。憎しみのシステム白雪姫は笑う。血は、既に継がれた。白雪姫は満足している。白雪姫システムは既に完成している。