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2008-09-3030分で更新するプレイ

変態達のプレリュード

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必ずしも変態が変態らしく生きられるわけではない。ここに住む一人の変態モギリ・モギゾウもその一人だった。彼の足は針金のように細く、彼の手は紙の様にぺらぺらだった。彼の英語力は英検3級ほどで、彼の胸板は洗濯板のようにだんだんになっていた。それでも彼は変態だった。隣の家のベティ(あだ名)は、彼の幼馴染だったが、とんだビッチで、切れ長の目はカマキリのようで、モギゾウの中で第三位になるほど嫌いだった。それでもモギゾウは、彼女と仲良くした。彼女がこの辺で一番の権力者(人間関係とか空気的な意味で)だったからだ。彼は変態だったが、それをベティやサノスケやらペコちゃんやら、モリナガに知られることを恐れた。

そして3年の日々が過ぎる。いつから3年というと、彼が中学を卒業してからだ。そのとき、彼はまだ高校二年生。二留が決まって、一人、二年生を頼む、とか、俺たちが行っても泣くなよとか、同級生(元下級生)に言われているところだった。彼の家に集まったメンバー23名。クラスのほとんどがそこに集まっていた。そして、そこにベティが現れた。

現れたベティは登場するなり、まずモギゾウの家の玄関に飾ってあった花瓶でクラスメイトの野球部の草虫を殴りつけた。ガチャンと音がして、草虫の頭蓋が割れた。それからベティは、右足を鞭のようにしならせて、クラスメイトの麦粉ちゃんを床に叩き付けた。床暖房が止まって、床が割れた。床の下に人骨が見えた。モギゾウの父親の買っていた猫の死骸だった。「母さん」モギゾウは何事かを嗅ぎ取って、しばし悲しくなった。しかし、事態は収拾という二文字を見せない。物語はまだ回収されない。

ベティの目はらんらんと踊っていて、黒目がびゅんびゅんと残像を残しながらかけめぐっていて、誰もが恐怖した。残り21名のクラスメイト達はモギゾウの家のリビングから逃げ出そうとやっきになったが、元より狭いモギゾウの家のリビングで、そのような多数が動けるはずもなく、唯一の出口であるリビングの入り口はベティがいるものだから、一人一人、ベティの毒牙のような犬歯やら、握りこぶしやら、鞭のようにしなる足技などにかかって死んでいった。

そして、モギゾウだけが残った。

「モギゾウ。どうして教えてくれなかったの」

モギゾウには何のことだかわからない。今日のパーティのことか? しかし、それはモギゾウのクラスの会だし、しかも留年残念会だなんて、悪意に満ちた善意あるいは、善意という名を借りた悪意の塊のような会によばれたところで、ああ、ベティなら嬉しいかもしれないなと思い、モギゾウは謝ろうとした。

「この会は、ああ、ごめん」

「違う」

ベティは、泣いているようだった。目に涙を貯めている。モギゾウははっとした。虫は、カマキリは泣くのだろうか。泣くというのは目にゴミが入ったときとかに泣くから、泣いたりするのかなと思ったけど、今関係なかった。モギゾウはいつも今関係ないことを考えてしまう。だから、留年したりするのだ。モギゾウは反省した。半世紀くらい反省しろ、と思った。面白くないなとも思った。また、関係なかった。

「私は、聞いてんの!」

ベティの叫び声にはっとするモギゾウ。ごめん、聞いてなかった。モギゾウはますますうなだれる。うなだれることで、リビングの惨状をみる。床にはうっすらと血だまりができている。あれ、和久井の腕なくなってるんじゃないか? あ、これか、いやこれはピンクちゃんのだ。ああ、また関係ないことを考えてしまっている。あれ、これは関係なくないのか。でも、ベティの問いに答えなきゃ。

顔を上げるとそこにベティはいなくて、何故か、そこにあったパソコンを見ている。ブラウザが開いている。そして、お気に入りの中の、モギゾウが家族にばれないように深く深くに階層を切った中のURLを選んでいる。

「どうして、ブログ始めたって言ってくれなかったのさ。昨日、たまたま見つけてさ。ちょーうけるんだけど、これ」


それがベティの最後の言葉だった。にやつきを顔に貼り付けたまま、ベティは、モギゾウの手によりダイニングテーブルの角で頭を打ち昏倒し、そのまま目を覚まさなかった。

「どうしよう」

モギゾウはため息と共に絶望を吐き出す。もう庭はいっぱいだった。23人のクラスメイトとベティの死体は、モギゾウの父の30年ローンの結晶である一戸建て(ミニサイズ)の庭には入りきらない。もっと深く掘り直す必要があったが、そのまえに両親が帰ってくる。

「どうしよう」

モギゾウは再び呟いた。庭からは、ボコボコと手や足が生えていて、ベティの三角形の頭の頂の部分が見えている。

「お困りのようね」

「お困りのようだなあ」

「お困りんグだね」

「お困りーぬ」

「お困り惨状」

「おこ・まり」

「だ、誰だ。そんな適当な文章、絶対ブログに載せられない。そんな言葉を発するヤツは!」

モギゾウは叫んだ。そして、天井からぶら下がる一人の金髪の女性の姿を見つける。さっきの言葉は全て、この女性が発したものだった。

「全ては見せてもらったわ。あなた、重度の変態振りを」

「き、君は」

「私はエキゾチック11の一人、変態ウェイトレス・どないか聖子。あなたを誘いに来たのよ。変態ブロガー・モギダモギゾウ君」


こうして、5年後、変態ピアニスト・小栗瞬発力に負けてエキゾチック11から去るまで、モギダモギゾウは、変態ブロガーとして、その性を全うしたのだった。

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