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2009-02-08人工HIGH

Bブロック一回戦・第三試合「おまる兄弟VS陸路兄弟」

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御円家に生まれた双子は3歳から7歳までの期間、御円家所有の山中で過ごす。両親はその間わが子に会うことはならず、養育の一切を乳母に任せる。乳母は必ずしも女性ではなく、乳母もまた御円家の人間である。多くの場合は祖父母であり、伯父または叔母の場合もある。長命として有名な御円家では曽祖父母であることも珍しくない。ただ彼らに共通するのは一点、彼らもまた双子であることと、そして御円家に伝わる秘術の伝承者であること。養育者であり、師匠。御円家の双子は、山中の厳しい環境にて体と心を鍛え、そして、御円家に伝わる秘術を学ぶ。双子は、御虎子と呼ばれ、御円家の中でも特別な存在となる。


「そして、これが御円家の秘伝だ……特と味わえ」

試合開始早々、おまる兄弟のとった行動に、相対する陸路兄弟のみならず観客すべてが戦慄した。

おまる兄は陸路兄弟に背を向けた形で体育座りの体勢になり、両手を合わせ肘を開けて、腕と胸で五角形をつくったまま、膝の上に肘を置いた。そしてなんとか後ろを見ようとして首を可能な限りひねり、真横を向いたところで止まった。

おまる弟はズボンのベルトを外しながら、誰ともなしに語りかける。

「人は理解できないものを見たとき、恐怖を覚える。これは本能的なものではなく、人が考える力を持ったことによる、とぼくは思う」

ズボンを下ろしたおまる弟を見て、観客の中の女子数人が声をあげる。色白で中性的な顔立ちのおまる弟の足は黒雲のような毛に覆われていた。

「人は考えることで、物事の結果を予測し、生存競争に打ち勝ってきた。それは野生でなくなった今となっても変わらない。理解できないとは、知らないとかそういうことじゃない。考えることができないことを言うのだ」

おまる弟は、ブリーフも下まで下ろした。

レフェリーが注意を発する前に、おまる弟は、おまる兄の腕にまたがっていた。丁度、おまる弟の股間が、おまる兄の顔の前にあり、おまる兄が必死にそれから目を背ける形になる。

「さあ、お前たちはどうだ? 理解できるか? ぼく達を理解できるか?」

最初から全裸だったおまる兄の、両腕の肩から手首にかけてがタオル生地のもさもさしたので覆われていたのが何のためかがわかったが、おまる兄弟の真意を理解できるものはこの場には誰もいなかった。


そして、陸路兄弟は完全に困惑していた。こんなはずではなかった。おまる兄弟のことなど眼中になかった。陸路兄弟は、3BTP*1の中堅戸愚呂っぽい兄弟であり、1BTPのおまる兄弟に苦戦を強いられるとは考えてもいなかったのだった。

陸路兄弟は、ここ暗黒!戸愚呂っぽい兄弟統一トーナメント開催地である首浮腫み島まで、陸路のみを選んでやってきた根性とキャラ設定を売りにするつもりだったが、おまる兄弟の唐突な自分語りに完全に言うタイミングを逃していた。

しかし、完全に戦意を喪失し携帯電話をチラ見し始めた陸路弟を見かねて、陸路兄が口を開きかけたとき、既に事態は後戻りできない状態になっていることに気づいた。今まで涼しげだったおまる弟の顔がいまや赤みを帯び、饒舌に語っていた口は堅く閉じられている。口を開いたまま固まった陸路兄の代わりに観客のひとりが声をあげた。

「こいつ、きばってやがる!」


「ふふふ……」

きばりながら、おまる弟が笑う。両肘は九十度に曲がり、手はグーの形で握りしめられている。

「やめろ! うう、お前、実の兄の上で、な何をする気だ!」

おまる弟は小刻みに震えながら答える。

「最初にウのつく事さ……ちなみにぼくはウとオは同時にするタイプだ」

観客の中には動揺して逃げ出すものも現れた。Bブロック・一回戦は、密閉型特別ステージで行われている。狭い室内でのおまる兄弟の行為は比類なき反社会的行動と言えた。陸路弟が狼狽して、おまる兄に向かって叫んだ。

「お前はそれでいいのか! 弟に乗られて、それで、兄としていいのか!」

おまる弟の目に少しだけ動揺が浮かんだ。それは動揺というには小さすぎる瞳孔の揺らぎ。陸路兄はそれを見逃さなかった。勝機はここだ。陸路兄の思考が勝利に向けて回転を始めたとき、それまで無言だったおまる兄が口を開いた。

「それでいい。兄として、それでいい。おれは弟より先に生まれたから兄となった。その時間の差が意味を持つのではない。先に生まれた方を兄とするということ。それはただ役割を与えるためのものだ。重要なのは役割だ。役割は幸不幸を生まない。役割をこなすことが幸福であり、役割をこなせないことが不幸なのだ。俺は幸せだ。弟の為にしてやれるすべてのことが幸せなのだ」

おまる弟の目のゆらぎが止まった。だが、その目が悲しみを宿していることにまで、陸路兄弟は気づけない。おまる弟の震えが止まり、おまる兄弟から白い湯気が立ち上った。

ドン、と太鼓がなった。

太鼓の音で我に返り、はじめて陸路兄弟は武舞台から降りていることに気づいた。戸愚呂兄弟は退かない。この場合、おまる兄弟の勝ちである。


既に観客のほとんどが会場から逃げ出している。

うなだれて鼻をつまむ陸路兄弟に、おまる弟が声をかける。おまる兄弟は姿勢を変えないまま、武舞台の端まで移動して、陸路兄弟を見下ろしている。

「陸路兄弟。ぼく達は君たちだからこそ、最初から全力を出した。最後に聞いておこう。移動手段に陸路のみを選ぶことで比類なき兄弟である君たちが、この海に囲まれた首浮腫み島までどうやってきたんだ?」

陸路兄が顔をあげる。陸路弟はいまさら泣いている。陸路兄は真っ直ぐにおまる兄弟を見据え、にやりと笑った。

「それは次の大会まで語るまい。貴様を王座から引きずり降ろすときまではな」

そして、陸路弟の手を引き、会場を去っていった。

おまる弟はその後姿が見えなくなるまで眺めた後、兄の肩をたたいて合図した。すると、おまる兄は体育座りのまま後方に跳躍し、かもしかの要領で円形のコロシアム上の会場をかけのぼっていった。


暗黒!戸愚呂っぽい兄弟統一トーナメント

Bブロック一回戦・第三試合「おまる兄弟VS陸路兄弟」:勝者 おまる兄弟(陸路兄弟が棄権)

http://throw.g.hatena.ne.jp/sasuke8/20090128/p1

*1:ベース戸愚呂っぽさポイント。戸愚呂っぽさポイントは戸愚呂っぽい特性(強い、筋肉、お酒ダメなんでオレンジジュース下さい等)ひとつにつき1ポイントで数えられるが、ベース戸愚呂っぽさポイントは名前で加算される。陸路兄弟は、三文字・陸路のく・陸路のろ、により3ポイント。

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