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2011-12-29反省も、後悔も、満足感もなく

黄泉の国の調味料(33/100)

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Web真珠養殖の核による物語自動生成(95%手動)

ルール

・定められた言葉を最低5つ使って物語を作ってください。

・あと言葉の構造を変えない改変は可とします。人称の変化(僕、私)、鍵括弧の有無、句読点の追加・削除、漢字にする・漢字をひらく等。

他の文投げ部員も年内に同じことをやります。

http://throw.g.hatena.ne.jp/yarukimedesu/20111128/1322567313

8/33 プロローグ


「メンンンンンーッ」

耳をつんざく悲鳴のような音が響き、空間に赤い点が表れる。その点はうごめくようにして形を変え、大きくなっていく。

やがて祭壇の上に、ビンのように先がすぼまった円筒状の物体が姿を現した。

それは、全体的に黄土色をしており、尖った先端部分だけが赤く光っている。それは、己が生物であることを主張するように、もう一度、メンンンンーッと鳴いた。

それに答えるように神官たちが声を合わせる。「キューピー!」

神官が一人、前に進み、その物体の前でうやうやしくかしずき、手に持った骨のようなものを差し出した。


村人たちは、その様子を固唾を呑んで眺めている。

しかし、

やーん! 恥骨、恥骨ー! 返してよ! お母さんの恥骨!」

一人の少女だけが大きな声をあげて泣きながら祭壇に近づこうとするが、戦士たちに捕まえられる。

「えーん! えーん!」

肩を抑えられながら泣き続ける少女に、村人たちは同情的な目線を送るも、少女を助けようと行動を起こすものはいなかった。

この儀式が無事終わらなければ、みな、死ぬ。村人たちはそれがわかっている。



明日から死ぬ。死んでいく病。

医者にそう宣告された人々は、例外なく、次の日から死人となる。体は生きることを止める。しかし、精神は死なない。朽ちていく身体を眺めながら、完全な死を待つ。身体はやがて動かなくなり、視ることも、聞くことも、しゃべることもできなくなる。誰もその理由を、治癒の方法を見つけられない。

神がいるならば。

神がいるならば、せめて、罪の名を教えて欲しい。

人々はそう願い、それも叶えれぬと知って絶望した。


風よ、大地よ、ちくわよ、大根よ、おでんの精霊達よ!

神官が叫ぶ。祭壇上の、四大精霊を司る蜀台に灯がともる。先ほど、降臨した「何か」を祝うように。

神官が手に持っていた少女の母の恥骨を、冠のように、降臨した「何か」にかぶせた。それは初めからそうあるべきだったように、「何か」の上に収まった。


世界に蔓延した絶望に対して、国家宗教であるサバミソニ教団は何の対策もできなかった。結果、無数の弱小宗教団が勢力を持つようになり、各地で邪教紛いの儀式が行われることになる。

この村もその一つであり、200年ぶりに、熟女の恥骨を神に捧げる儀式が執り行われることとなったのだった。

それに反対する勢力もあったが、村長はその権限でもって、儀式を執り行うことを決定した。

さらに村長は反対勢力のあぶり出しのために、10年ぶりに村縦断ウルトラクイズを開催し、クイズ形式の心理テストにて村の神を崇めない人間を見つけ、罰ゲームとして、容赦なく断罪した。村長をはじめとした古老たちと、反対勢力の、クイズ形式で始まったこの闘いは、23人の死者と72名の負傷者を出し、幕を閉じた。

そして、村外れに追いやられていた神官が村に呼ばれ、儀式が始まったのだ。


しかし、反対勢力は全滅したわけではなかった。

ここに、その反対勢力の一人である少年がいる。少年は、茂みに隠れながら、気持ちを抑えるのに必死になっている。

杖にたまった葉緑素はまだ7割程度……いけるか?!

しかし、青鯖騎士団見習いである少年に、突撃の決定権はない。

少年はただ歯を食いしばって、動き出そうとする体を抑えるしかない。少年の目の前で、幼馴染の少女が、悲しそうに泣いている。それが少年には、我慢ならない。

杖を強く握り締めたまま、少年は少女から目を離せないでいる。


揺らせ揺らせい!揺らしませい!

神官が叫ぶ。

Dカップ以上の村の女性たちが、祭壇の周りを踊る。

それに導かれるように、祭壇の上の物体が空中を浮遊して、祭壇を降りてくる。

恥骨を冠した「何か」が、神官の前に現れる。

神官は、疲労と恍惚の入り混じった表情で、「何か」のまえにかしづき、言った。

「マヨ……」

「それ以上言わなくて良い」

その場にいた全員の頭に声が響いた。同時に、絶望で乾いた人々の心に、ぬるま湯のような心地よさが注がれた。




11/33 AYAWAY


イェイ・メツチヤ山、ホリデ寺院。国教とは異なる小さな宗派でありながら、独立した勢力を持つ最も小さく最も力のある教団。ここでは多くの若者が修行している。

その大祈祷広間に、老人と若者が立っている。老人は、寺院の最高位の僧を示す袈裟を着ており、若者は修行僧の服に旅装をしている。

老人はくぐもった声で若者に言った。

「あの男に、何を吹き込まれたか、知らん。やめておきなさい

「嫌です。私は、あややになります」

午前未明、一人の修行僧が山を降りた。

絶望が漂う下界へ。胸に一つの希望をたずさえて。


大祈祷広間に残った老僧は、ひとり離れていった弟子の言葉を思い出す。

「山中で、修行していて、あややになれるとでもいうんですか」

その目は真っ直ぐに見ていた。それは老僧を見ていたのか、あるいは……。

老僧は振り向いて、広間の壁に彫られたマツーラ母神の像を眺める。

「」小あややを経て、やがて大あややに至る」……」

老僧が師に教えられ、弟子に教えてきた言葉。

一人の弟子が、新しい境地に向かおうとしている。彼は果たして、小あややを脱したのか、それとも全てはこれからなのか。老僧の顔に満足げな笑みが浮ぶ。全ては、本人が見つけてくるだろう。

老僧は、マツーラ母神の前で、祈りの儀式をはじめた。




15/33 彼氏彼女の事情


児ポ顔に関する法案が成立した3ヶ月後、俺は追われることになるだろう」

男はいつものように、静かに語った。

女は、その態度そのものに苛立って言った。

「どうして? あなたの顔と児童ポルノがどう関係あるっていうの?」

「わからない。それを判断するのは政府さ。ウルスラニクスが知らせてくれたんだ。俺はブラックリストにのっている。法案が通った三ヵ月後にブラックリストに載っている人間を一斉逮捕するそうだ」

「そんな……こんな死なない死人が増え続けるこの状況で、そんなことに何の意味があるのよ」

「意味は、あるさ。政府の誰かの業績になる」

「なんで、そんな、冷静なのよ……」

女は泣きそうになる。

男は、そんな女を、哀れむように見つめた後、言った。

「だから、もうお前には会えなくなる。さよならだ」


それっきりだった。男は女の前からいなくなった。

女はまた泣いたが、泣くだけ泣いて、そういう男だったのだとあきらめた。

それでも女は時折、男がどういう男だったかを思い出そうとする。


人混みで彼氏とはぐれてしまって、やっと見つけたと思ったら、彼氏が山のフドウの肩の上に乗ってた。そんなとき、おまえならどうする?」

「無視する」

「彼氏は呼ぶぜ。『おーい! こっちこっち!』ってな。それで、フドウが気付いて、フドウは優しいからな、お前をひょいと親指と小指でつまんで肩に乗せる」

「顔を覆うしかないわ」

「他にはない?」

「そうね。あきらめて、山のフドウの肩の上からの眺めを楽しもうかな。人混みも回避できるし」

「それか、一目散に逃げるかだな。フドウにつまみあげられる前に」

「何がいいたいの?」

「そういう検討をしてもらいたいってことだ」

「山のフドウに乗る予定があるの?」

「ないさ。でも想定は必要だと思う。実際に、山のフドウを見たときに、お前はどう動くべきか。それがないと、きっとおまえは動けないだろう。山のフドウはでかい。でかさは恐怖だよ。力のわかりやすいメーターだ。恐怖すればすくむ。正常な判断はできない」

「だから、今のうちに考えておく、と」

「そう。予め考えておいて、いざというときは、それを実行することだけを考える。だから、考えるんだ。山のフドウの肩の上に彼氏が乗っていたらどうするか?」

そんなとき、男は冗談を言っている風でもなく、ただ淡々と語るのだった。


あるとき、男は待ち合わせ場所に来るなり、言った。

部屋に帰ると自分探しに行ってた俺が戻っていた。そいつは痩せていて、顔色も悪かった。そいつは何かを探しているようだった。俺はテーブルの上にあったバナナを渡したが、首を振る。冷蔵庫にはカルピスと牛乳しかなかったので、牛乳カルピスを作ってやったが、それも飲まない。俺は昔、何が好きだったろうかと考えながら、バナナを食べて、牛乳カルピスを飲んでいた」

「そしたら、待ち合わせに遅れたってこと?」

「そうだ」

「もっと、ましな嘘を……」

「なあ、おまえは昔、何が好きだった?」

「とりあえず、牛乳カルピスは嫌いだったわね」

男は珍しく、驚いたというように、顔色を変えて、

「そんな奴がいるのか」

と言った。

「いるわよ」

女は答えながら、笑ってしまっている。心底、驚いたのだろう、目を見開いた男の顔が新鮮で、笑いが止まらない。

女はそんな男が好きだった。


女は思う。

男がそんな男で、いついなくなってもおかしくないだろう。それは納得できた。しかし、男がいなくなるのは納得できない。


豚の足首専門店という看板が掲げられた店に、女はいた。

店主は、店の名のように豚足のように寸胴で凹凸がなかった。その男は、死んだような目で女を見ていた。

女は、一通り店の中を見て歩いた後、カウンターに向かった。

まずカウンターに肘を置き、店主が近づいてくると、腕を伸ばし胸倉をつかんで引き寄せる。

「『おい! クソ豚! お前は本当に不快な生き物だな。お前のその目、鼻、口、首、肩、胸、腹、腕、腰、足、全部が全部気持ち悪い。それに、そのヘドロを飲み込んでまた吐き出したみたいな臭いはなんなんだ? テメエのそのケツの穴みてえな口から漂ってくるのか? 気持ち悪いんだよ!』」

最後に唾を吐きかけて、手を離す。

店主は死んだような目で黙り、手元のボタンを押した。

店主の後ろの棚が左にスライドして、下に続く階段が現れる。

女は、カウンターの中に入り、店主の横を通り過ぎるときに、軽く店主の腕を叩いて言った。

「ありがとう」

「こちらこそ。ただ、どこでここを知ったか知らないが、気をつけな。そっから先は、この国のアンダーグラウンドだ」




22/33 改造少女A


そのアメンボは確かに空中を歩いていた。アメンボの4本の足の先から波紋が広がるのがみえた

宙を歩く数匹のアメンボの上に、一人の男が立っている。

「これが僕の能力。スカイ・ストライダー(波紋闊歩)だ」

自慢げな男の言葉を聞き流し、わたしは横腹を押さえる。鈍い痛みがある。

これはアラームだ。その男がターゲットであることを教え、わたしが戦闘可能であることを知らせてくれる。

改造手術により最初に摘出され、改造を受けてまた埋め込まれる人工内臓。人体にとっての異物であるそれは、他の内臓たちの中で、肩身の狭い思いをしているのかもしれない。だから、時折、鈍い痛みでもって、知らせるのだ。自分が、そこに、いるのだと。

わたしたちは、それを、さびしい脾臓と呼んでいる。

わたしは、腹部を開ける。血は出ない。肋骨を三本ほど抜くと中にスペースがあって、そこにリボンをかけた四角い箱が見えた。

私はそれを取り出しながら、無表情で言う。

「今週の~びっくり、どっきりメカ~」


改造少女専門学校の門をくぐったことを、今は後悔している

わたしがなりたかったのは、フリルのついたドレスや、セーラー服や、きわどい水着で戦う美少女戦士だった。夢や愛や希望みたいな美しいもので奇跡を起こす存在だった。

それが、今のわたしは……何だ?


わたしの腹から出てきた箱のふたが開き、なかから小さなロボットが出てくる。どんどん出てくる。そいつらは、整列し、行進する。

それを無視して、宙に浮いたダークサイドの改造人間・怪人アメンボ男は、わたしに語りかけてくる。

チョコレートが二つあるよね、このうち一つが僕、もう一つが君、わかる?

アメンボ男の手には、ホールケーキがあり、その上にはチョコレートで作られた人形が飾られている。

惚れやすいアメンボ男は、気に入った女性のためにケーキを焼き、ケーキを持って、再び女性の前に現れる。そして、女性に拒まれても、女性をアメンボに運ばせて、お持ち帰りしてしまう。

そんな被害が十数件にのぼり、KGC(改造・ガールズ・クラブ)に要請がきて、わたしが囮捜査をすることになったのだ。

そして、アメンボ男はわたしを標的にした。しかし、わたしが別段綺麗だったわけでもない。その証拠にこの男は、この期に及んでもわたしをみていない。自分の行為に陶酔し、自らが危機に陥っていることすら認識していないように見える。


わたしの脾臓から出てきたロボット達は、既にわたしを取り囲むように陣形を組み終わっている。その数は48。

ロボットは、それぞれ卵を半分に割って、二つ並べたような形をしている。二つの頭の上には小さな赤い出っ張りがある。考えたくないが、あれは乳首のつもりだろう。

わたしの担当博士(トレーナー)の赤穂博士が作るロボットには、彼の思想が反映されていて、必ず一つの特徴を持つ。

TKB96!」

整列したロボットが合唱すると、それぞれが空中に飛び出していく。

47体のロボットが合体する赤穂ロボだ。これが僕の原点であり、永遠のテーマだ」

赤穂博士の子供のような目が思い浮かんだ。

飛び出した47体のロボットは合体し、それらがそのまま大きくなった形……巨大なおっぱいとなった。

そして、一体だけ残っていたおっぱいロボットが、私の胸に張り付く。どうやら、これが今回のコントローラーのようだ。私は胸に張り付いたロボットを揉みしだきながら号令する。

「赤穂ロボ、GO! 敵を殲滅しろ!」


私は、改造少女。涙はとうに枯れた。ただ、この国にはびこる悪を粉砕するのみだ。




33/33 その男、古今東西


その男はいくつもの名前を持っている。

探偵、エージェント、ブラックオーナー、無動作飛翔、芝刈り機、ミスマッチ・デストロイヤー、人間ポンプ、椅子男、パラシュート大臣、エトセトラ、エトセトラ。その名前は全て、彼の一部を表しており、それは彼の多彩な能力と、非凡な人間性を表している。

彼の最初の名前である「探偵」が彼を有名にし、その結果、彼は王都に事務所を開くほどの名声を得た。


この日、事務所に客人があった。

事務所に入ってきたの恰幅の良い初老の紳士で、少し暗い顔で、事務所の奥に座る男に尋ねた。

「あなたが、『探偵』ですか」

男は、椅子から文字通り飛び上がり、4メートル程飛び上がったところで背中からパラシュートがひらいて、ゆっくり降りてくる。着地し、ひざをついた男は不敵に笑って言った。

古今東西……おれのなまえです」

紳士は、男の奇矯な行動(と思ったよりも高い部屋の天井)に驚いたようだが、紳士的にそれに応える。

「……そうですか……古今さん。あなたに依頼があってきました」

「ここに来られる方は8割方そうです。探偵事務所なんでね。それと、古今東西は本名じゃあありませんよ。いくつも名前があるんでね。それらをまとめて呼びたいなと思ってましてね。まあ、そんなことはどうでもいい。どうぞ、お座りください」


紳士は、古今東西に勧められたソファに座ると、少し落ち着いたようだった。

そして、依頼内容を語り始めた。

「わたしの息子を探して欲しいのです。お恥ずかしい話ですが、息子は10年前に家を出て、それきり行方知れずなのです」

古今東西は、特に興味を持った様子もなく、自分のカップにコーヒーを注ぐ。

紳士は少しだけ間を開けて、意を決したように次の言葉を発した。

「わたしは、かつて、オーナ使いでした」

「ほう」

古今東西の目の色が少し変わる。紳士の話に少し興味を示したようだ。

紳士は、それに気付いた様子もなく、話を続ける。

「今では、わたしのオーナは全盛期の3分の1程度。ですが、当時は戦士として、塩鯖騎士団にも参加し、騎士長も経験しました。そこで得た経験と人脈があって今の地位を築けたといっても過言ではない。だから、わたしは息子にもオーナ使いになって欲しかった。それが当然だと思っていた……エゴですがね」

紳士は来た時よりもさらに暗い声音で言った。

「息子は、オーナ使いにはなりませんでした。才能はありましたが鍛錬を全くしなかった。今から思えば、わたしへの反発があったようです。しかし、それでも息子は騎士団に入ることを考えていた。それなら、なおさらオーナは役に立つ。そう言うわたしに息子は言いました。『正しい事をするのに、屁をこく必要があるのかい?』と。返す言葉は、ありませんでした」

そこで言葉を切り黙り込んだ紳士の代わりに古今東西が口を開いた。

「ふふ……今日は驚くことばかりだ。あなたが依頼人として現れること自体が驚きであるのに、まさかオーナ使いだとは。こんなこと誰もしらないでしょう」

「昔の話ですよ」

「前アイドル党党首、四栖本さん。一日総理大臣制度を作ったのはあなただ。政治を、いや、アイドル政党のやったことは政治ではなかったかも知れないが、どの政党もやれなかった日本の変革という偉業を確かに成し遂げた。……と私個人は思っています。現在の国会議員の8割はアイドルであるけれど、その体制はあなたが作ったんだ」

紳士は口の端をゆがめ、自嘲の笑みを浮かべる。

「それもすべて、昔のことです」

興奮気味に話していた古今東西は、突然口調を『探偵』のものにもどす。

「そのあなたが、今になって息子を探す理由とは、なんです?」

紳士は暗い目で言った。

「妻が死にました。いや、今も死んでいる途中……そう、今この国を襲っている奇病に妻も侵されている。その妻が、完全に精神が病んでしまう前に、一目息子に会いたいと言っている。わたしは、それを叶えてやりたい」

「奥さん……失礼ですが、あなたは確か」

「はい。妻とは離婚協定中です。あなたも知っているでしょうね。わたしが政界を去るきっかけとなったスキャンダル……不倫騒動が原因です。ここで言ってもしょうがないが、あれは誤解だった。わたしの不倫相手とされたのは、オーナ協会の刺客です。オーナ使いの暗殺者。高度なオーナ使いの戦いは、相手のオーナを出させないことにある。わたしと刺客が戦っているところを、偶然妻は見てしまった。あのときのことは今でも鮮明に思い出せます。妻は言いました。『おしりあい?』『ち、違う』『でも、その……』妻に指摘されるまでもなく、わたしのお尻が彼女のお尻と接触していることはわかっていた。刺客はそのまま逃げたが、わたしが説明しても、妻は聞く耳をもたなかった。それだけです。それで、40年の夫婦生活が終わり。しかし、妻は死んで、またわたしを頼ってくれた……。わたしはそれに応えたいのです」

紳士の目には涙が浮かんでいた。

『探偵』である古今東西は、それを知ってか知らずか、事務的に言った。

「オーナ使いのあなたがオーナ協会に襲われる話も気になるが、まず息子さんについて、知っていることを教えてください」

紳士は、気を入れ直すように語り始めた。

「息子は、どうやら改造人間となる道を選んだようです。『耳から生まれた糞太郎!』をキャッチフレーズとするヒーローの話を聞きました。方々、手を尽くし、それが息子らしいことだけわかりました。息子の名前は、耳太郎と言います。一応、騎士団にも所属していますが、ドラゴン騎士団という名前がわかったのみです」

「そんな騎士団聞いたことがないな。遠く異国のドラゴンは炎を吐く幻獣だが、この国のドラゴンとは、週三で日焼けサロンに行くような男を指す卑称だ。それを騎士団の名前にするとは……」

「わたしが知りえたのはここまで。おそらく、これ以降はこの国のアンダーグラウンドに関わることでしょう。あなたのお力を貸してください。古今東西さん」

探偵、古今東西は少しだけ考えていたが、突然立ち上がって、言った

布頭巾ちゃん! 旅行の準備!」

「は、はい!」

油断していた私は、文字通り椅子から飛び上がる。

それを見て、紳士が感嘆の声をあげる。

「ほお、助手の方も、オーナ使いですか……」

私は咄嗟に無意味なオーナを出してしまったことに赤面しながらも、雇い主の旅行の準備を始める。

私の雇い主は、命令即実行を私に強いている。

古今東西は、力強い声で紳士に言った。

「この事件、この古今東西が請け負いました。ただし、この件、一筋縄ではいかないようです。あなたのことももっと話して頂かなければなりません。あなたを襲った刺客のことも。調査には時間がかかるかもしれません。奥さんはどこにおられますか?」

「サバミソニ教団の総合病院にありますが……」

「おれの知り合いに身体保存のスペシャリストがいます。紹介しましょう。必ず、息子さんを、奥さんに会わせます」

紳士は涙を流し、古今の手を握った。

「頼みます!」

古今東西の目は、すでに紳士を通り越し、はるか先を見ている……ように見えた。


私はまだ知らなかった。

この事件が、この国の絶望と希望を繋ぐ大きな物語に繋がっていることを……。


(To be continued...)

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