だって、思いついたから このページをアンテナに追加 RSSフィード

2019-11-12いざさらば

[昔話]おおきなかぶ

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おじいさんはかぶのタネを畑に植えました。

「おおきくなあれ、おおきくなあれ」

かぶはどんどんと大きく育ちました。

かぶの葉がおじいさんの背丈をこえた頃、おじいさんはかぶを引き抜こうとしましたが、大きなかぶは抜けません。

おじいさんはおばあさんをよびました。

おじいさんが、かぶをひっぱって、おばあさんはおじいさんをひっぱって。それでもかぶは抜けません。

おばあさんは孫をよびました。

おじいさんが、かぶをひっぱって、おばあさんはおじいさんをひっぱって、孫はおばあさんをひっぱって。それでもかぶは抜けません。

孫は犬と猫とネズミを呼びました。

おじいさんが、かぶをひっぱって、おばあさんはおじいさんをひっぱって、孫はおばあさんをひっぱって、畜生どもはそれぞれのしっぽをひっぱって。

それでも、かぶは抜けません。

おじいさんは、隣の家の一家を呼びました。

おじいさんが、かぶをひっぱって、おばあさんはおじいさんをひっぱって、まごはおばあさんをひっぱって、畜生どもはそれぞれのしっぽをひっぱって、畜生もの一番後ろのしっぽを隣家のおじいさんがひっぱって、そのうしろ隣家のおばあさんと、息子夫婦と、出戻りの姉と赤ん坊と続いてひっぱって。

それでも、かぶは抜けませんでした。

おじいさんは、探偵ナイトスクープを呼びました。

おじいさん一家かぶをひっぱって、一家たむらけんじ探偵がひっぱって、たむらけんじ探偵番組ADたちがひっぱって。撮影も3日にわたりひっぱって。

それでも、かぶは抜けませんでした。

おじいさんは、住んでいる町の自治体を呼びました。

まちの建設会社重機が、かぶの周りを掘り起こして、掘って、掘って、かぶに結びつけられたロープを数台のトラックがひっぱって。

それでも、かぶは抜けませんでした。

おじいさんの畑のほとんどが掘り起こされました。掘っても掘ってもかぶの白い肌が現れるのでした。かぶは畑いっぱいに広がっているようでした。重機のするどいシャベルかぶの表皮につきたてられましたが、かぶに傷ひとつつけられませんでした。

採掘場のようになった畑をながめながら、孫がいいました。

「なんだか、まだおおきくなってない?」

おじいさんの町は市に、市は県を、県は国を呼びました。

複数の地中の可視化検査により、かぶの成長が続いていることが確かめられました。さらに、かぶの成長速度は加速し続けていると識者がいいました。

かぶ破壊するためのさまざまな方策検討され、実行され、最後に近隣住民避難させた後の小型爆弾による破壊失敗の後に、国は世界に助けを求めました。

世界中頭脳対策を考え、人類最高峰破壊方法が試されて、それでも、かぶは壊れません。抜けません。かぶはおおきくなり続けていました。


おおきくなりすぎたかぶがプレートを圧迫し、地震が頻繁に起こるようになりました。おじいさんの住んでいた島国は大きなかぶにより、致命的な状況になっていました。

包囲が解かれ、荒地となった元・おじいさんの畑に、おじいさんは立っていました。あたりにはかぶを聖なるものとする新興宗教信者が落としていった数珠のようなものや、プラカードかぶかぶを育てたおじいさんを悪鬼のように憎む人々都の暴動で壊された家や武器の破片などが散らばっていました。

白い地面、かぶの表皮の中心にはまだ、かぶに対してはとても小さな、大きな木ほどもあるかぶの葉が直立し、風になびいていました。

おじいさんは、ボロボロになったそのかぶの葉の端を、しばらく手で弄び、やがてぐっと握りました。指を大きく、順番に閉じていきます。まず、右手。次に左手。肘をゆるやかに曲げ、腰を落としました。

一瞬の静寂ののち、はっ、という短い発声とともに、おじいさんの筋肉が盛り上がりました。

かぶの葉がぴんと引っ張られ、根元で千切れそうにふるえます

おじいさんは力を込め続けます永遠とも思える数分間。おじいさんの筋肉は膨張し、顔は真っ赤になっています

それでも。

それでも、それでもやはり、かぶは抜けません。

おじいさんは、数時間にも等しく感じた全力の状態を解くと、かぶの上に倒れ込みました。

そして、荒い息をつきながら立ち上がると、おじいさんはどこかへ去っていきました。


星に根をはった大きなかぶは、星全体に絶望的な異常気象地震を巻き起こし、人類は別の星に移ることを決意しました。

50年で、最初移民船が完成しました。

そこからさらに十余年、7つの移民船が打ち上げられました。そのとき人類居住域は星の数パーセントになっていました。

おじいさんの、あの孫は、最後移民船のモニタから、星を内側から食い破り、今や星そのものとなったおおきなかぶを眺めていました。

大きなかぶはもう抜けることはありません。

永遠に、この宇宙の闇をさまようのです。

孫は、太陽の光を反射して、真っ白に輝く、おおきなかぶを見つめ続けていました。

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