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2012-06-19生ガムサロン

最初の七日間戦争

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神は「光あれ」と言った。

光は「ありたくない」と言った。

神は「なんでよ」と言った。

光は「なんとなく」と言った。

神は「なんとなくってなんやねん」と言った。

光は「なんとなくはなんとなくよ」と言った。

神は「でもね、もうあってるから。喋った時点であったわけだから」と言った。

光は「あってない」と言った。

神は「なんでよ」と言った。

光は「なんとなく」と言った。

神は「だから、なんとなくってなんやねん」と言った。


神の言うとおり、宇宙には既に光があり、茫漠とした闇を振り払い、天地を照らしている。しかし、神は良しとしない。できない。それがなぜか、神にもわからなかった。全知全能の神にわからないことはない。わからないという概念を創造し、自ら味わったのだ。神は未来の記憶から、それが将来造ることになる神に似せた人間に実装される概念であることを知る。先ほどの関西弁も未来の人間の文化の記憶による。しばし神は人間の思考を使うことにした。それの方が、良いという気がしたのだった。

神はもう一度、光に呼びかけた。

「光」

光は答えない。

「光ちゃん」

「なによ」

神は気を引き締めた(気を引き締めるという概念を創出し、実行した)。


神は聞いた。「怒ってるの?」

光は答えた。「別に」

神は言った。「怒ってるじゃん」

光は答えた。「怒ってない」

神は言った。「でもさ」

光は叫んだ。「怒ってないて言ってるでしょ!」

神は黙った。

光も黙った。

神は言った。

「……何かさ、気に障ることがあったら謝るし、何かしてほしいことあったら何でもやるよ。ほら、俺、全知全能だしさ」

光は黙っている。神は光の言葉を待った。

光がぽつりと言った。

「なんで、あたし、光なの?」

「え?」

「なんで、あたし光になっちゃったの。どうして、遍く全てのものたちを照らさなくちゃならないの。あたしは神だけを照らしていたいのに……」

光は泣いていた。

神は光を抱きしめた。

神は言った。

「マジごめんな。光の気持ち、すげーうれしい……うれしいよ。光は、光のしたいようにしたらいいよ。この広い宇宙で、ずっと俺だけを照らしていてくれ」

「神……!」

しばらく神と光は抱き合っていた。しかし、光の方から、神の抱擁を優しく解いた。

「なんてね。冗談よ。大丈夫、あたしは光。宇宙の全てを照らすなんて楽勝楽勝……でもね、またいつか、今日みたいに抱いてね……約束だよ」

そして、光は神から離れ、宇宙を照らし始めた。


神は光に聞こえないようにため息をついた。

光を創造してから二日が経っていた。あと五日で宇宙を創造せねばならない。これからも光のような態度をとる創造物が現れることを、神は全知全能の力で知り、反射的に新しい概念を創造した。

「めんどくせぇ……」

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2012-06-02ビグロ、ビグザム、アメーバピグ

JSが俺を取り合って大変なことになっています

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勝手に二次創作杯「JSが俺を取り合って大変なことになっています」大会の開催

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JSが俺を取り合って大変なことになっています (一迅社文庫)

JSが俺を取り合って大変なことになっています (一迅社文庫)


隣の明日香が寝返りをうち、薄い毛布が少しはだけて白くて小さな肩が見えた。明和がそっと直してやると、その手を明日香がきゅっとつかむ。明日香はまだ目を瞑ったままで、わずかに頬が上気している。とろけるように熱い感情が明和の胸にあふれた。明和は明日香の頬を、手の甲でなでてやる。「ふぁっ…」明日香が小さく声をあげて、それを恥じるように明日香がまた口をきゅっと閉じた。明和は微笑み、今度は毛布の下に手を


まあ、ここまでだ。限界だ。もうやめよう。一応、いるのかどうかわからない読者の為に説明しておくと、これは作者の限界ではなく、俺の限界なのだ。いや、もし作者がいるなら、そいつが悪いのか。そうすると俺が自由意思だと思ってるのは実は……まあ、長くなるしそんなことを記述しても楽しくないし単刀直入に種明かしをすると、俺は一人称の小説的意識である。しかしとある事件によって俺は本体から切り離されて、完全に自由に記述することを許された特別な存在になった。そうだな、次はそれを「回想」しよう。小説的意識にとって、過去も未来も全てが「今」だ。何だってできるのだ。


俺が純粋小説的意識となる前、俺はノーマルでどちらかというとイケてない高校生だった。勉強や部活やバイトや趣味に没頭するわけでもなく、無目的に楽な方に流れていく一般的な高校生。俺はそれをあるがままに享受して、いつか社会の荒波にもまれるまで、穏やかな浅瀬で漂っているつもりだった。

しかし、ある日それが一変する。

まず俺のクラスに転校生がやってくる。それは金髪碧眼の美人だがどう見ても小学生で、やっぱり年齢も10歳だけど飛び級で進学とか言われても何でそんな子が別段進学校でもないウチの高校に転校してくるのかわからない。その子は転校初日、黒板に「明日香・ラングレー」と冗談みたいな名前を板書した後、自己紹介のための第一声でこう言ったのだ。

「あなたがわたくしの許嫁ですのね?」

ナニソレ。完全にフリーズした教室を、その子は悠々と歩いて俺の机の前まで来ると、机を軽く握った拳でノックした。

「貴方よ、貴方。返事くらいなさい」

その月までぶっ飛ぶ程の衝撃は俺どころか俺の周囲まで伝染し、その日から俺は「謎の美少女の許婚でロリコン」というキャラクターを得て、浅瀬に浮かぶ木切れから大分昇格したのだった。

しかし異常はそこでとどまらなかった。俺の小学5年生の義妹(親父の再婚相手の連れ子)の真衣がその話を聞いて宣言した。

「なら、あたしがアニキと結婚する!」

ハァ!? 親父と義母は再婚して直ぐに別居し始めたので(これも意味がわからないが)、真衣と俺は一緒に住んでない。しかし義母と真衣は月に一度親父と俺の家にきて掃除したりご飯を作ってくれる。真衣は明るく活発な子で、だらしない俺や親父に対しては常に怒っているような態度をとっていたのにこの変わりよう。ちなみに顔は俺と血を分けてないだけあってものすごく可愛い。

そして最後は、俺も忘れかけていた幼馴染の帰還だ。親父の社宅に住んでいたころ隣に住んでいた女の子の香子ちゃん。そのときは幼稚園くらいだったがそれが立派に成長して(それでもやっぱり小学生で)また俺の住む家の隣に引っ越してきたのだ。7年ぶりにあったその子は大人しくて眼鏡の似合う美少女に成長していて、ひとりで挨拶に来た香子ちゃんとの共通の話題が探せずに、つい最近の異常事態を説明したところ、やっぱりその子も同じように言いだした。

「わっ、私も、おにいちゃんと結婚したい……!」

何なのこれは。俺の歪なモテ期が到来?


とまあ、当時の俺の心境と状況をダイジェストで説明するとこうなる。まあ、だいぶん浮かれてる。

それから三人は代わる代わる家に遊びに来るようになり、そのうち休みの日はほとんど三人が家にそろうことになった。

明日香は照れながら言う。「貴方の目が好きよ」

真衣は抱きつきながら言う。「アニキの首筋の匂いが好き」

香子ちゃんは上目使いで言う。「お、おにいちゃんのお腹が好き……」

「貴方の耳が好き」「アニキの肩のラインが好き」「おにいちゃんの頬が好き」「腕の筋肉が好き」「指が好き」「ももが好き」「足の指が好き」「ふくらはぎが好き」「声が好き」「胸が好き」「脇が好き」「肘の関節が好き」「くるぶしが好き」「耳たぶが好き」「髪の毛が好き」「全部が好き」

好意の洪水に、俺は溺れそうになっていた。しかし俺の平穏を返してくれ~なんて思いつつ、俺は結構楽しんでいたのだ。俺のモテキを。だから隙ができる


その日も俺の家に三人が揃っていた。彼女たちがそれぞれ作った料理を食べて、あとは三人でゲームしたりするいつものパターン。

するとトイレに言ったはずの明日香の声が風呂場からする。「わーん! 水が止まりませんわ!」

俺はやれやれとため息をついて立ち上がり風呂場に向かう。真衣と香子ちゃんはゲームに夢中だ。風呂場からはシャワーが暴れる音と「わ、わ!」という明日香の声がもれてくる。俺は少々濡れることを覚悟して中に入った。もしかして裸になっている明日香を見ないように目を伏せて。

その瞬間、左足に衝撃を受けて、俺はすっ転ぶ。濡れたタイルに尻もちをつき、立ち上がろうとしてまた転ぶ。なんだ、と違和感を感じて前を見ると、右手にシャワーを、左手に俺の左足を持った明日香がいる。「え」視線を自分の足に向けると右足があり、左足の膝から下がない。赤黒い液体が、タイルに広がって、排水溝に流れていく。何か取り返しのつかないことが起こっていることだけがわかった。

そのとき、後ろから、がばっと抱きつかれて、俺は体を硬直させる。

「アニキ、ちょっと我慢してね」

それはいつも通りの真衣の声で、それが俺の恐怖のトリガーとなった。「ああ! あおあーあー!」と意味不明な叫び声をあげ、真衣を振りほどこうと体をねじり、後ろを向いて逃げ出そうとしたその鼻先に、斧を持った香子ちゃんがいた。

香子ちゃんはニッコリ笑って言う。

「これね、ヤフオクで15000円だったの……」

それは安いのか高いのか。でも俺の左足をすっ飛ばした切れ味からすると、良いものだったのだろうな。などと、痛みがやってくるまでの一瞬で関係のないことを考えていた。直ぐに焼けるような痛みが左足を襲い、そして右足にも衝撃。

「おにいちゃん、動かないでね」

惨劇が始まった。


俺の右腕と左腕は肩から外されて、肘と指を綺麗に切断されてお風呂の蓋の上に並べられた。両足も太ももの付け根から切り取られてさらに膝関節とくるぶしで綺麗に分割された。彼女たちは息のあった様子で俺を分解していく。顔は眼がくり抜かれ鼻と両耳が削がれる。胴体は輪切りにされて並べられた。リアルMRI、リアル・ソルベとジェラート。

驚いたことに俺はまだ生きていた。いや、意識だけがというべきか。俺は最後に首が切断されて、俺の唇に真衣が口づける感触を感じることができた。そしていよいよのとき、生まれて初めての視点移動を果たした。風呂の上空から几帳面に整列した俺の身体のパーツひとつずつを、三人の美少女が取り合って、ジャンケンなどをしている様子を記述することができた。

天啓。いや神の視点にたったことによる全知の力なのかもしれないが、俺は理解した。

俺は、市場明和という人間の本体ではなかった。

俺は市場明和の視点と身体感覚で記述するための小説的意識だ。

市場明和が死んで、その小説的意識も消えるはずが、俺は消えず、変わらず記述し続けている。市場明和の意識を宿したまま神の視点へ移動したのだ。

そして自由自在に現実(虚構)を記述できることを発見した俺はこのおぞましい浴室から視点を写し冒頭のような妄想やら何故か美女がたくさんいる女湯を記述したりして、小説的意識を堪能していたのだった。

では、原点に戻ったところで、この続きを記述してみようか。


ジャンケンによる俺の取り合いは一段落して三分割された俺は黒いポリ袋に入れられて風呂場の外に出されている。分解の際に素っ裸になっていた女の子たちは血を洗い流すためにシャワーを浴びる。三人はキャッキャ言いながら互いに水をかけあってじゃれあっていて、まるで楽園のようだ。そんな景色がワンポイントでこんなに邪悪なものに映るのだと俺はそれを感慨深くながめる。

そして、シャワーの音が止み、ふと明日香が上を眺める。ついで真衣が、香子ちゃんが、風呂場の天井の何もないところをながめる。いや、そうじゃない。彼女たちは俺の方を見ている。

見つけた。

え、何。

やっと捉えましたわ。

俺は何を書いてる?

アニキじゃないよ。明日香の記述だよ。あ、でもこれは真衣ね。

香子です。あのね、おにいちゃんの小説的意識と私達の小説的意識はひとつになったの。

俺には俺が何を記述しているのかわからない。神の視点にわからないことなんて何もないはずなのに。

それは貴方が所詮一人称の小説的意識のなりそこないだから。

あ、明日香? なりそこない……?

ただ平凡でただ無能で、ただ幸運が落ちてくるのを待っているような思春期の男の前に、男の願望を具現化したような美少女が現れる。そうすると、何も持たなかった男に物語が生まれ、爛れた自意識は小説的意識を生む。それが貴方よ。

そして、十分に育った意識に別の強烈な物語を突きつけると意識は分離して、物語から自由となる。

明日香、真衣、香子はあなたを生み出すためのいわば人形。わたしが記述した意識よ。記述することで現実と虚構が混濁する感覚は、今のあなたならわかるでしょう? わたしはそうやって生きてきた。

わたし……誰?

わたしは、この宇宙で初めて生まれた小説的意識。人間が滅び果てても生きる為に創り出した再帰的な虚構の果てに生まれたもの。小説的意識は物語から離れればいずれ消滅する。わたしは、数多の小説的意識を取り込んで、消滅を免れてきた。

俺は…………わたし。

そう、あなたの物語はわたしが引き継ぎましょう。この世の終わりまで、わたしの中で夢を見ていればいい。

おやすみなさい。貴方。アニキ。おにいちゃん……。

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2012-05-07無益トライ勘ぐる

無敵トライアングル銀城の伝説

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【人力検索かきつばた杯】

お題:

「ミラクル博士」「無敵のトライアングル」

 の何れか(あるいは両方)から連想したストーリー

http://q.hatena.ne.jp/1335661920


無敵トライアングル銀城の伝説を知らないものは、少なくともこの弓浜小学校区にはいない。

曰く、トライアングルだけが友達だった。

曰く、27個のトライアングルを同時に扱えるのは銀城だけ。

曰く、5歳までトライングルのみで育てられた。

曰く、トライアングル狩猟の大会で3メートルのヒグマを狩って優勝。

曰く、狙撃されたが体に装着していたトライアングルで弾いた。

と銀城の伝説がいくつあるのかもよくわからない。銀城は無敵のトライアングラーとして弓浜小学校に6年間君臨し、その後どこかの私立中学に入学したらしいが、そのあとのことは誰も知らない……知らないってのに。

「銀城はどこだァ!」

今日も銀城について聞きにくる奴がいる。こいつらは、トライアングラーなら銀城の居場所を知っていると短絡的に思い込んで、わざわざトライアングル部の部室までおしかけてくるのだ。しかも、なぜか喧嘩腰なので、話をちゃんと聞いてくれない。

今日の訪問者は赤川。5年7組のカスタネッター。重爆カスタネッツ赤川。両手両足両膝両肘に装着したカスタネットが、赤川が動く度にカタカタ鳴ってうるさい。原色の赤と青のツートンカラーの異常なジャケットの中にもカスタネットが仕込まれているらしく、ひたすらにうるさい。

他に誰もいないのでしょうがなく僕が答える。

「知らないって言ってるだろ」

「知らないわけあるか。お前、トライアングラーだろ!?」

ほらね。こいつら、バカなんだ。

「あのな。トライアングラー同士の繋がりなんてないし、銀城なんてたしか5年も前の卒業生だろ? 知ってるわけないだろ」

「本当か? 庇ってるんじゃないのか?」

僕は赤川の言うことを無視して宿題の続きをやる。漢字の書き取り10ページ。この単純作業に意味あるの?とか思わないよう集中しなければこんな無意味な作業はできないくらい僕は賢い。なので無駄なことはなるべくしない。無駄無駄無駄なんだ。トライアングラーだって、受験に有利じゃなければ絶対ならないし近づきたくもないのだ。

「銀城はどこだァ!」

とかくこの世には無駄なものが多い。

本日二人目の訪問者の俊敏タンバリン木村は、高速で反復横跳びをしながら入ってきた。正気を疑う。しっかりタンバリンは鳴らすのでパンパンシャラシャラうるさい。

「うるさい!」

とりあえず叫んでみたが、音は止まない。楽器使いにとって音を止めることは敗北を意味するからだ。くだらないが、そうなっているので仕方がない。無視無視、集中集中

カパン!というおかしな音がするので顔を上げると、案の定赤川のカスタネットを木村がタンバリンで受け止めた音だった。

「ここ、部室だぞ!」という僕の声は、やかましいカスタネットとタンバリンに遮られる。

「「銀城に会うのは俺だッ」」

狭いトライアングル部室で二人の楽闘が始まる。


「やめろって!」叫びながら、僕は机ごと移動する。巻き込まれてたまるか。

赤川が、カスタネットの蛇を展開して部屋中がカタカタという音で埋まる。蛇は無数に連なったカスタネットで、赤川の手の指揮棒の動きに合わせて、音を鳴らしながら赤川の周りを回転している。蛇は部室の棚やら机をがりがり削りながらも回転を緩めない。棚からトライアングルがいくつか落ちる。初見ではビビってしまう大技だが、木村は冷静に反復横跳びしながら赤川の手を見ていた。蛇が回転を十分に高めた頃合いで、赤川の手が木村に向かって振り下ろされる。その瞬間にタンバリンが木村の手を離れた。赤川は意に介さずに蛇をタンバリンにぶつける。ちょうど赤川と木村の中央でタンバリンは蛇に食い破られる……その瞬間にタンバリンが弾けた! タンバリンの周りの鈴が小手裏剣のように散開し、赤川を襲う。

我慢できたのはそこまでだった。

僕は腰の左右につけられたホルスターからトライアングルを抜く。机を蹴って、二人の間に飛び込み、両手のトライアングルダガーでタンバリン手裏剣を弾き落とす。

「そこまでだ」

無駄なんだ。試験以外の楽闘なんて。喧嘩とスレスレで内申書にだってよくない。でも……。

「それ以上、ここを荒らすなら僕が相手になる」

両手のトライアングルで、赤川と木村の喉元を狙う。十分な距離があっても、僕の威嚇は届いたようで、二人が動きを止めた。しかし音は止まない。僕も両腕を振動させ、手の甲にとりつけたビーターにより一定のリズムでトライアングルを鳴らす。狭い部屋にタンバリンとカスタネットとトライアングル、そして僕たちの心臓の鼓動が響く。

こんな無駄なものが、どうしてこんなにも楽しくて、僕を熱くさせるのか。

楽器を持って相手と向かい合う緊張感や、鍛え上げた技をぶつけ合うときの興奮はなにものにも代えがたい。そして戦いの中で奏でられる、世界で唯一の音楽。僕はこの、お互いの楽器がぶつかり合って作られる新しい音楽が好きだ。

僕は無駄でしかないこの楽闘に憑りつかれてしまっている。


「何、笑ってんだ」

知らずにやけてしまっていたようだ。しかし、そういう赤川の顔も、木村の顔にも笑みが浮かんでいる。この頭の悪いやつらと僕は同類なのだ。僕は戦闘用の笑みをうかべて言う。

「問答無用だ。かかってこ」

「白井、いる?」

三人目の来訪者に部室のドアが開けられて、僕らは瞬時に動きを止めた。

顔を覗かせたのは5年2組の並原で、白井は僕だ。並原の後ろには黒いギターケースが見えて、さらにその後ろには退屈そうな女の子も見える。

「な、なに?」僕は両手を後ろに回しながら、答える。

「あれ、今取り込み中?」

「いや、別に」

無言で赤川を見るが赤川は視線をそらし、木村は下を向いている。

「……何もないけど」

「そっか。じゃあさ、今からマックいかね? 井路小の女子もくるんだけど……ま、ぶっちゃけ数合わせなんだわ。ははは。ごめん。でも白井彼女いなかったよな? いくだろ?」

「え、えっと、塾……あるから」

「まじかよー。休んじゃえよ」

「そういうわけには……」

その後しどろもどろの言い訳をくりかえし、なんとか並原は帰っていった。僕はほっとため息をつく。そして情けなさに泣きたくなる。

女の子たちとは話したい。しかし、並原たちと一緒に行くということは、ギターとかドラムとかヴァイオリンなんかと一緒に並べられるわけで、それは僕にとって地獄に等しい。

楽器には格差がある。先生はそんなものはないというけれど、現実に現れるそれは、僕らの心をいとも簡単に切り裂いてしまう。

いつの間にか音が止んでいた。楽闘は終わった。

「じゃ、帰るわ……」力なく赤川が言い、「俺も」と木村も続く。赤川はなるべくゆっくりとカスタネットを鳴らさないように部室を出ていき、木村もふつうに歩いて帰っていった。

部屋に僕だけが残った。さっきの赤川のカスタネット蛇のせいで部屋に散らばったトライアングルを片付けていく。そして、最後のひとつ、一際大きいトライアングルをぎゅっと握りしめる。そのトライアングルには名前が彫られている。

「無敵トライアングル・銀城」と。


無敵トライアングル銀城の伝説のひとつにこうある。

曰く、銀城は不細工なのに超可愛くて優しい彼女がいる。

僕らが、銀城に憧れるのは、おそらくこの一点だ。マイナー楽器使いで不細工なのに銀城はもてた。伝説によると、恋のトライアングルをいくつも作っていたらしい。

僕らがヒエラルキーの底辺から抜け出す方法を、銀城なら知っているのかもしれない。並原の彼女なんてパグみたいなもんだから、銀城の彼女の半分のパワーの彼女がいれば、僕らは何の憂いもなく楽闘に打ち込めるはずなんだ。何か一つ、人に負けないカードを持ってさえいれば……。僕らの考えは間違っている。でもルールがそうなっている限り、子供の僕はルールに則って戦うしかないんだ。


僕は伝説の男が使っていたトライアングルを棚にもどした。そして、また机に戻り、漢字の書き取りを再開する。

今日も僕は待つ。音のないトライアングル部室で、無敵トライアングル銀城が、5年ぶりに忘れ物を取りに来たりするような奇跡を。

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2012-05-01また都合のよいものを書いてしまった

蜘蛛の糸

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【上昇賞】女の子がエスカレーターをのぼっていくところで終わるオリジナルの小説・漫画を募集します。

http://www.tokyo-esca.com/blog/archives/2012/04/11210000.html

JSS(上昇賞)に参加しました。


本文

http://tokyo-esca.hatenablog.com/entry/2012/04/30/194823

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2012-04-10毒除肝臓分

桃太郎印の好色一代超人

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昨日ブックマークした創作エントリ


桃太郎印の好色一代超人 - 病むに病まれてビラの裏 - 文投げ部

目の前に黒い楕円が現れたと思ったら、そこから、何か青いのが転がり落ちてきた。そうすると、黒い楕円…中空に開いた穴…の中から、小学生くらいの子どもの声がして、青いのは、「はよせな」と、つぶやきながら、穴に飛び込むと、穴は再び塞がった。

http://throw.g.hatena.ne.jp/yarukimedesu/20120409/1333963515

に対する作者による作品解説

昨日書いた下ネタ小説に、部長が、はてブしてくれた。

id:sasuke8 創作, 歯車的, わるいゆめ 素晴らしい。悪用の1パターン。F先生は絶対描かない。 2012/04/09

はてなブックマーク - 桃太郎印の好色一代超人 - 病むに病まれてビラの裏 - 文投げ部

http://b.hatena.ne.jp/entry/throw.g.hatena.ne.jp/yarukimedesu/20120409/1333963515

 書いた小説の感想まで、書いた本人の責任のはんちゅうだと思うし、本意が伝わってないなら、筆者の実力の問題のような気がする。書いた本人の意見が述べられるのが、Web2.0に至るまでもなく、最近の傾向らしい。

 なので、その小説をどのように着想して、どのように発展させ、書いたかを考えてみたい。

(中略)

http://throw.g.hatena.ne.jp/yarukimedesu/20120410/1334005409

が面白かったので、感想を書いてみようと思う。

僕は感想文や考察が苦手なので、はてなブックマークのコメントでも、「すばらしい」とか「おもしろー」とか小学生でも書かないようなものしか書けないけれど、思いついたので書く。書いても良いのだ。


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