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2006-09-24ガオガイガーカウンター

心の旅4

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合格!」


突如、萌仙人の懐かしい声が響いた。

「おめでとう」

虎が山中に響くような大きな声で吼え、僕は圧倒され気を失った。


眼が覚めると、僕は岩の上に寝ており、傍らには萌仙人と虎がいた。

僕は、萌仙人合格という言葉を思い出し、その意味を聞こうと慌てて身体を起こした。


仙人は僕に語った。

「自らの生の為、絶望的な現実でさえも覆さんと虎と闘うは、『燃え』、そして、生を愛しむがゆえに自らの生の終わりさえも認めてしまうのが『萌え』ぢゃ。お主は既に『萌え』を体得しておったのぢゃよ」


生を愛しむが故に、自らの生の終わりさえも認める。僕は虎の生を美しいと想い、そのために僕の死が虎の生になることを喜んだというのか。


「人の数だけ、萌えがあるのではない。魂の数だけ萌えはある。虎にも、山に住む他の動物達にも、お主のいる岩でさえも、そしてお主自信にも萌えはあるのぢゃ。問題はそれを識ることができるかどうか」

 萌仙人言葉は、水のように僕の中に染みていった。


萌えとは、どこにでもあって、どこにもない…」

「おぬしはもう、わかっているはずぢゃよ」


僕の目の前でグルグル世界が歪む。萌仙人と虎と竹林グルグルと掻き混ぜられて、一つになり、白い世界だけになった。


僕は眼が覚めた。目の前のディスプレイには、『 第四回萌理賞』の記事が映し出されていた。いやにリアルな夢だった。虎を始めみたときの恐怖をまだ僕の身体は記憶している。


そして、同時に、あのときの虎を美しいと思ったことも。


キーボードを打つ。今なら書ける気がする。

あなたはつけてあげない

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君は、ぬかみそが好きだったね。いつも君は台所に屈みこんで、黒く長い髪を邪魔そうにかき上げながら、嬉しそうに、キュウリ茄子を漬けていた。


家中が臭かったよ。でも僕は君を愛していた。

いつの間にか、台所も、リビングも、寝室も、客間も、僕の書斎さえも、家中の部屋の床下には、ぬか床があった。それを僕が知った時、君はいたずらっ子のように舌を出したね。それだけで僕は最高にハッピーになった。


いつだったか、浴槽にぬかみそを満たして、そこに入ってたことがあったね。ぬかみそ入浴健康法なんて、出鱈目な名前をつけて。

あのときは驚いた。だって、帰ってきたら君が脱水症状を起こして倒れているんだもの。体の水分がほとんど抜けるまで、ぬかみそに浸かっていた君の、ぬかみそへの愛には嫉妬すら覚える。


それでも、ぬかみそを混ぜている君は、子供のように邪気のない笑顔で、それでいて美しかった。その華奢な体には信じられない程のぬかみそに対するエネルギーが詰まってて、それが眩しかったんだと思う。僕はそんな君をよく後ろから抱きしめたね。君は驚いて、でも笑いながら僕の顔にぬかみそを塗りたくった。僕は、それが君の最高の愛の表現だとわかっていた。君を愛していたから。


君は言ったね。

「貴方は漬けてあげない」

「どうして?」

「私を漬ける人がいなくなるから」


君の最後の頼み、僕は喜んで引き受けたよ。君が笑うのがとても好きだったから。でも、哀しかったよ。とても、とても。とても、とても、とても。


君のいない長い夏が終わって、やっと秋になった。君に会える。


僕はキュウリが嫌いだったけど、君の漬けたキュウリは好きだったよ。だから、もしかして、君の事をもっと愛せるようになっているのかもしれない。


ああ、見つけたよ。お帰り。


「ただいま、あなた」

物語 (74/100)(2009.10.9 追記)

http://d.hatena.ne.jp/wonder88/00010101

心の旅5

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萌とは生を慈しむことだ。

それは無限だ。無限であれば、何を書いても良いことになる。なら、ぬか漬けさえ萌になるはずだ。だが同時に、何を書いたところで、何も変わらないことにも気付く。

萌理賞は終わっていたけれど、僕は今、満足の中ディスプレイを閉じる。残念なような、ほっとしたような気持ちで。

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2006-09-18ハナクソリズム

心の旅3

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「よろしくお願いします」

虎はなんと人語を喋った。年を経た虎は人語を解すというが、僕はまだ硬直を解くことができない。口は動かず、ご丁寧にどうもとだけ思った。


仙人は消え、僕は虎と竹林にこもり萌を学んだ。学んだといっても、虎は余り喋らず、僕は虎に竹林に様々な生き物を紹介されるだけだ。しかし全ての生き物が虎のように喋れるわけでなく、僕が一方的に喋って終わりということがほとんどであった。


数ヶ月が過ぎた。

今日は、誰と会うんですか」

既に、虎への恐怖は消えていた。畏怖と尊敬と、信頼だけがある。

「もう、この山の全ての生き物と会いました。おしまいです」

「…そうですか」

残念な気持ちを隠せなかった。私はいつの間にか、生き物との会話そのものに楽しみを見出すようになっていたのだ。私が、何故ここにいるのか、その目的を忘れたわけではないのだが。

「萌が、わかりましたか?」

虎は、真っ直ぐな目で僕に聞いた。

「わかりません」

僕は、正直に答えた。

虎は、残念そうに「そうですか」と言った。

「私は、仙人様から、全ての生き物と話した後も、あなたが萌えをわからなければ、食い殺せと仰いました。私はあなたを殺さねばなりません」

「そうですか」

このとき僕の心は、細波すらたたず、澄んでいた。この美しい虎に殺されることに、清々しい誇りすらあった。僕はすんなりと、死を受け入れた。


僕は生きるために、会話した生き物を殺して喰った。最初は涙が出た。しかし、僕がここに生きているということは、そういうことなのだとわかってからは、涙も出なくなった。だが、僕はまだ、あの涙の後始末を望んでいたのかもしれない。

「どうぞ。あなたに食べられるのなら、それでいい」

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2006-08-30子猫をぶんなげない

心の旅2

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そのまま、消えてしまいそうな萌仙人に僕は慌てて、叫ぶ。

「わ、わかりません」

プライドも全てかなぐり捨てて、僕は大地に伏して、頼んだ。

「私は、萌を描いてみたいのです」

サワサワと、竹林が揺れる。見上げると、水晶の眼には、少しだけ、感情が浮かんでいた。

寂しさ? 悲しさ? 

「人が、萌えを知って、数十年…。ほんに、小さいのう。わしらは」

「…」

「だがな、わしらが知る前から、萌とはあったのぢゃ」

「そ、そうなのですか!」

そうなのか? 萌えとは人間の作り出した概念ではないのか。

「大地は、草花は、獣たちは、萌を知っていた」

人間だけが知らなかった?」

僕は、足元の名も無い草を見た。この草も萌を知っている。

僕は、当りを見回した。サワサワと揺れるこの竹林も知っているのか。


「後は、その虎に聞け」

いつのまにか、僕の隣に、虎がいた。即座に身体が硬直した。

3メートルはあるだろう。その大きさと、醸し出す野生の雰囲気に圧倒され、僕は死を意識し、死に呑み込まれた。

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2006-08-25夏が終わる

心の旅1

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萌えとは何だろうか。

無邪気な子供のように、萌えを描こうとしてた僕は、ここにきて、萌がわからなくなっていた。

僕は何に萌え、そしてそれを描くとはどういうことか。


考えるうちに、いつの間にか僕は霧深い山の中にいた。

そして、萌仙人と出会った。


「あ、あなたはもしや萌仙人さまですか」

Yes.I am」チッチッチというジェスチャーをした後、

仙人は厳かに、

「いかにも、わしが萌仙人ぢゃ」

と言った。


「も、萌仙人さまッ! どうか、私に萌を教えてくださいッ!


仙人は、その水晶のような眼でじっと僕を見た。僕は酷く狼狽した。その眼からは何一つ読み取れなかったからだ。


萌えとは」

ごくり、と僕は唾を飲み込んだ。


「どこにもあって、どこにもないもの


風が吹いた。竹林がサワサワと揺れる。

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