Hatena::Groupthrow

石麻二芯の文章読本 このページをアンテナに追加

2012-01-22

探すのは2

09:06 | 探すのは2 - 石麻二芯の文章読本 を含むブックマーク はてなブックマーク - 探すのは2 - 石麻二芯の文章読本

「おーい」


さっきまで確かにそこにいたはずの2は、いつの間にかどこにも見えなくなっていた。


「おーい」


僕は、2が泣いているのではないかと思って、ただひたすらに焦ってしまう。


「おーい、2」


返事はない。


もしかして2は一人で帰ってしまったのだろうか。


「おーい」


と、人の気配を感じて振り返る。


「ははは。君は本当に間抜けだ」


僕が昔裏切った人だった。


「君は間抜けだ」

「まあそうだと思う」

「本当に?」

「何度か、本心を隠していてすまなかったと思ってるよ」

「何の為に」

「何の為に?」


それきり黙ってしまったので、僕は向き直る。


あれ? と。


自分が何の為にここに来て、何をしていたか。


それが思い出せない。


確か誰かとここに来たはずだけど。


それが誰だったのか。


「お兄ちゃんはそんなんだから」


横を見れば、そこには知らない妹がいた。


「誰だよ」

「妹だよ」

「誰のだよ」

「お前だよ」

「知らねえよ」

「知らねえよ」


「おーい」


僕はまた2に呼びかける。


「またそうやって、探して。いったい何を」

「うるさいな」

「お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃなかったらよかったのに」

「お前みたいな出来のいい妹を持って兄ちゃんは幸せだったよ」

「過去形」

「幸せだよ」

「いったい何を探してるの」

「ここに二人で来たんだよ」

「一人でしょう」

「だからそのもう一人を探してるんだよ」

「ふうん」

「向こうだって僕を探してるかもしれないし、それだったら僕が下手に動き回らない方がいいのかな」

「さあ」

「冷たい奴」

「別に」

「ああ、そうだな。お前って生まれた時からそうだもの」

「あはは」


「おーい」


それとも引き返すべきだろうか。


「おーい、2」


もしかすると何かに腹を立てたのだろうか。確かに僕はまだ2の事をよく知らない。


「えーっと、何かあれだったらさ、ごめん。だけど一緒に帰ろう」


ゴーンと遠くの方で鐘の音がする。


もう一度、ゴーン、と。


ため息が出た。


時間を確認しようと思ったら、左手の小指から血が出ている。


「うわっ」


血が元来苦手なのである。


「あーあ。えー」


よく見れば小指の先、爪の上半分から先が無くなっている。


「えー」


参ったな。どこかで引っ掛けたかな。困るなあ。


「これで先っちょが見つからないと、いろいろと支障が出るなあ」


出血は大した事ないけど、これからの事を考えるともう一つため息をついてしまう。


「だけども、よくよく考えれば、特に困る事も無いだろうし」


とにかく2を探そう。


でも、もう自分には運命の赤い糸を結ぶ部分が無くなってしまったなあ。


いやいや、あれは根元に結わえてあるのじゃないかな。そもそも薬指だったかもしれない。


「それに、もしも」


2がこの指に気付いたら、それだけ僕が2を探していた事が伝わるかな。


そしたらこの親愛の情を、やれやれと言って受け取ってくれるのではないだろうか。


「あー、だけど」


もし2の方も、小指の先を切っていたら。


2は、それをじーっと見つめて、写メなんて撮って。そんなふうに悠長にしてるかもしれない。


それはよくないと思う。


「おーい」


傍から見れば恥ずかしいやつかもしれないが、さっきより声を大きくしてみる。


「おい。おいってば。2」


「あの」

「はい」

「あなたが探してる人、あっちですよ」

「え」

「あっちの方で、ずーっと小指の先を」

「ごめんなさい、どっちですか」

「あっちです」

「あの歩道橋の方?」

「向こうには近づかない方がいい」

「あの向こうには地図がありませんから」

「昔はあったようですが、最近はとんと見ません」

「行けば戻れないでしょう」

「そんな事言っても、見えているじゃありませんか、すごそこに」

「本当に見えているままならばそうなんでしょうね」

「とにかく、どっちなんですか」

「あっちです」

「ほら、あっちですよ」

「それこそ、見えるでしょう、ほら」


2は、もこっとした恰好で、そこにいた。


「おーい」


僕は駆け寄る。


「探したよ。急にいなくなるなんて」

「ああ、確かに。ごめん」

「いったい何してるの。そんなに地面を見て」

「転がっていくのを見たから、追いかけてここまで来たんだけども」

「いったい何を。まるで夢遊病者だ」

「たぶんこの辺りにあると思うんだけど」


僕は右に歩く2の右手を見る。そして左に歩く2の左手を見る。

どうやら小指は不足なく健在だ。


「あ、あった」


駆け出した2を、今度は探さなくてもすむようにぴったし追いかける。


ああ、そうだ。親愛の情、親愛の情。

2がしゃがむので、僕もしゃがむわけだ。


「ほら」


左手をついと2の眼前に差し出す。

2が微笑んだ。


「はい」


2は拾い上げたそれを先の欠けた小指に載せた。

待ってくれ。傷口に菌が入るじゃないか。


驚いてすっと引いた僕の左手には、全くの慮外、元の小指があったのだ。


それじゃあ、手をつないで二人で帰ろう。

RizkyRizky2013/03/30 04:10This atricle went ahead and made my day.

wfpwqowfpwqo2013/03/30 16:33WbD1za <a href="http://astoziajfyfc.com/">astoziajfyfc</a>

hbhoayhbhoay2013/04/01 06:42uQhmKC <a href="http://oxztusjbpcuv.com/">oxztusjbpcuv</a>

xlmqmaqrxlmqmaqr2013/04/02 09:03Vej6Ug , [url=http://ebgvtpvzzqkr.com/]ebgvtpvzzqkr[/url], [link=http://xpoolefyofbw.com/]xpoolefyofbw[/link], http://mswhnrnjwlgf.com/