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2008/05/04 (日)貴方の知らないお盆の世界

遅漏盆

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 お盆の頃には、ナスやキュウリに割り箸を突き立てて、馬を作ったり、花火を打ち上げるが、それに関するお話。



 ―ある男が、マスタベーションを懸命に行っている。もう、30分、1時間は、陰茎をしごいているだろうか?男のいる部屋の隣、シャワールームからは、水音が響いて来ている。女が一人、身を清めている。そう、この男と女はこれからセックスをするのだ。だのに、なぜ、男はマスタベーションをしているのか?シャワーの音が止み、男も、マスタベーションを止めた。バスタオルをまとった女が部屋にやって来て…セックスが始まった…。

 一通りの、短めの前戯を終え、男は、挿入をした。そこから、4,50分の間、何度も体位を変え、セックス運動が続いた。約50分の間に、女は三度果てたが、男は、最後に一度、射精をしただけだった。女は、目に少し涙をため、涎をだらしなくたらし、恍惚としている。それに対し、男は、思い詰めたような表情をし、ぽつりと漏らした。


 「また、遅くなっている…。」


 この男、白田拓郎(しろたたくろう)、驚くべきは、その持続力、少しのインターバルはあったにしろ、1時間のマスタベーション、しかも一度も射精していない、に続き、50分間の抜かずの挿入に耐えたのだ。その勃起力と持続力たるや!…それが、白田の悩みだった。セックスの前に行うマスタベーション、それは、セックス時間短縮のために、彼がとった苦肉の策だった。



 白田は少年時代にマスタベーションによる射精をした事がない。元々、遅漏の気があったのかも知れないが、性に対する少年らしい背徳感が、遅漏をさらに進めてしまったのかもしれない。

 結局、白田は、初セックスの時まで、射精を経験していない。マスタベーションはもとより、夢精も彼はしたことがなかったのだが、だったら、本来なら、定期的に排出されるであろう精液はどうなっていたのか…?白田の言葉を借りるとするなら…。


 そんな白田の初セックスは、17歳の時だった。相手は1歳下の後輩の女の子だった。白田に初めて出来た彼女だ。彼女は、色白で、適度にふくよかで、何よりも処女だった。白田の初セックスは、膣セックスの、処女セックスで、文句なしのセックスだった。白田が期待していた、バカバカしくはあるが、「優しくして…」というお願いも聞く事が出来たし、何より、新雪に踏み入るような、自分の亀頭が破瓜を押し進めていく、満足感、征服感、慈しみ、それらを含めて本能で感じる事が出来たのである。ただ、一つ意外だったのは、思っていたより、彼女の中が広かった事である。

 いや、それよりも、意外だったのは、初セックスが、挿入から97分間にも及んだ事である。白田も彼女も勿論、セックスを体感したのは、その時が初めてだったのだが、やはり、その異質に気付き、結果として、彼女は酷く傷ついた。彼らのセックスが長かっただけに、皮肉な結果なのだが、白田と彼女は、長く続かなかった。そして、その後、白田は、クラスメイトから「動く石像」と揶揄される事となった。

 初セックスを経験し、白田は、自身の呪いとも思える遅漏を深刻に考えるようになった。


 それから、白田は、何人もの女性と付き合う事になるが、やはり、90分超のセックスが原因となり、ことごとく、上手く行かなかった。なんとか遅漏を克服しようと、白田、風俗に行くも、規定の時間内に射精が出来ず、もがくだけだった。白田の20代は、そうして過ぎて行った。



 ―これらの苦い経験から、白田は、セックスの前に、マスタベーションを行い、少なくとも、彼の中で、射精寸前まで自分を高めておく事で、セックス時間の短縮を図っていたのだが…


 「また、遅くなっている…。」


 それすら、彼の遅漏を押し進めてしまったのだった。一般に、膣セックスよりも、実は、手淫オナニーの方が気持ちが良いと言う。そのため、膣セックスの前に、手淫オナニーを行う事は、長い目で見て、膣セックスの時間を延長させる事になってしまっていたのだった。



 その後、白田は、それでも、セックス時間を短縮させるために、陰茎以外の性感帯の開発を果敢に行った。ナス、キュウリから始まり、それが、鈴、ローター、バイブに変わるまで、一年とかからなかった。白田は、四六時中、それらを身につけるようになった。勿論、遅漏も果てしなく進み、白田は月に一度も射精をしなくなってしまった。

 ある時、白田は、山に篭ると言い出した。何でも岐阜県におわすというマスタベーションの神に会いに行くのだと言う。別れ際に白田は言った。


「挿入をして、射精をするまでが本当にセックスなんだろうか?私には分からない。だが、初セックスをした時、射精をした時、頭の先から仏様が飛び出したような感覚は今でも覚えている。だから、私は、その仏様に会いに行くのだ。」



 ―数年後、白田は、飛騨山中で即身仏となった。右手で陰茎を握り、乳首には鈴、アナルにはローターが入った異形の即身仏である。

 日本では、7月の半ばに、お盆の頃に、ナスやキュウリで馬を作ったり、花火を打ち上げる習慣がある。その習慣の裏で、一部のオナリスト達は、遅漏盆と称し、仏となった白田のために、ナスやキュウリを飾り、そして花火を打ち上げる。何度も、何度も、連続で、連続で…。


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