病むに病まれてビラの裏 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012/05/15 (火)「俺は好きだったぜ。」…ラダトーム王のダイイングメッセージ。

スイーツ(笑)の方程式

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『x + y =3…(1)

 3x + 2y =8…(2)』


 数学教師、原田又男は、そう黒板に書いた。テスト前だから、試験範囲の復習。ルールさえ知っていれば、簡単な連立方程式だ。


「この場合は、まぁ、方法は色々とあるけど、そうだな。エックス、プラス、ワイ、イコール……」


 原田が説明をしだすと、教室の女生徒が何人か、クスクスと笑い出した。原田は、少し間を開けて、再び、説明を続ける。


「うん。この(1)式を(2)式にあわせるために、3をかけて、さんエックス、プラス、さん……」


 またもや、数人の女生徒がクスクスと笑い出した。箸が転がっても面白い年頃はあるかも知れない。中学2年生と言えば、まさに、その頃なのじゃないか、と原田は考え、説明を再開する。


「エックス……。」


 クスクスという声。実は、原田は、女生徒が何で笑っているかは検討がついていた。自分が中学生の頃を思い出すと、そういうことで、ニヤニヤとしていたし、まぁ、女の子がそんなことを考えるのも、変じゃないかも知れない。原田が中学の頃とは、性に関する考えも変わっただろう。


「あー。うん。さっきから、何人か笑っている生徒がいるが……なんだ、男子の方もニヤニヤしているな。」


 改めて教室を見渡すと、声を上げていたのは数名だが、その声につられてか、ニヤニヤと顔を綻ばせている生徒が、結構いた。笑いが伝播しやすいのも、この年頃の特徴だろうか。


「うん。あんまり、こういうことを言うと、先生も立場上良くないのだけど、今は数学の時間だ。『エックス』なんて言葉は、問題ごとに出るし、他にも沢山あるだろう。例えば、職員室には『ファックス』があるし、君達は『ソックス』をはいている。先週の金曜ロードショーでは『マトリックス』がやってたし、その……。」


 と言いながら、原田は黒板にアルファベット三文字を書いた。「マジかよ……」という空気が教室に流れる。


「『SFX』技術は凄かったな。」


 教室は、変な安堵感に包まれた。それを確認して、原田は、続ける。


「まぁ、君達の年頃は、そういうことに興味があるだろうし、先生も、中学の時は、そうだった。だから、そんなことじゃ怒らない。でも、今は授業中だ。もう、これぐらいにして、ちゃんと勉強しような?」


 原田は話をしながらでも、女生徒の動きを注意深く見ていた。


「だから、この手紙も、今は、預からせて貰うぞ。」


 と、言い。ぱしりと、女生徒の手から、ノートをちぎって作った手紙を取り上げた。「見られて困るようなモノは書いてないよな。」と、軽いノリで、流れるように手紙を開いてしまった。それは、迂闊なミスだった。女生徒は、ワっと泣いてしまった。原田は、一瞬、硬直したが、すぐに自分を取り戻し、手紙の内容には触れないで、すぐに手紙を、彼女に戻した。

 少し授業の雰囲気が淀んでしまったが、女生徒も泣きやみ、授業は再開された。こういう時、教師は自分の授業が長く感じる。



 授業が終わり、原田は職員室に戻ってきた。先ほどの授業中に受けたショックが尾を引いているのか、肩を落としている。それに気がついたのか、同僚の体育教師、大沢利一が、原田の肩を揉みながら言う。


「どうしたんですか?原田先生?元気ないじゃないですか?」

「あー、いや、ちょっと、さっきの授業で……。」

「何か問題でも?」

「あー、いや……。」

「煮え切らないなぁ。言っちゃって言っちゃって……。」

「ちょ……大沢先生、痛いです。」


 大沢は緊張をほぐそうとか、さらに原田の肩に力を込めた。学生時代のラグビー経験は伊達じゃあない。


「痛い痛い。大沢先生、痛い。」

「ほらほら、早く言っちゃって楽になんなさい。」

「あー……いや、ですね。女子から手紙をとったんですよ。ほら、授業に回したりする。」

「はいはい。」

「それが……文芸部の、ほいず、帆伊豆恋の手紙だったんですが、藤吉にあてた。」

「えぇえぇ。」

「いや……なんというか絶句でしたよ。何か、友達への冗談だと思ってのですが、その、数学のエックスとワイが、そのカランデるのですよ。」

「はぁ?」

「いや……『かけてやる』とか、そんな感じで……。」


 その時、二人の会話に聞き耳を立てていた国語教師、木藤仁美が、お茶を吹き出した。


「大丈夫ですか?!木藤先生?!」


 ビックリした声で大沢が言う。「大丈夫です。大丈夫です。」と言いながら、木藤はお茶を拭く。大沢は、原田の元に戻る。


「いやぁ。年頃の女の子の考えることは、分からないものですね。記号同士が、ね。そのヤラシイことをするなんて……。」

「心中お察しします。はははは。」


 お茶を拭きながら、その会話も木藤は聞き逃さない。


――あちゃー……。二人とも文芸部の部員だ……。


 木藤は、文芸部の顧問である。


「まぁ、時代は変わるものですよ。たしか、そういうの『スイーツ』って言うんですよ。原田先生。」

「あぁ。最近、よく聞きますね。」


――違う!お二方!それは違う!


 と心の中で木藤は叫んだが、当然、訂正することはできなかった。眼鏡についたお茶の水滴を拭き取りながら、「あんまり生徒の自由に活動させるのも良くないな。」と反省した。


「ま、どうですか?今夜あたり?」

「またですかぁ?今月ちょっと多くないですか?」


 その反省も、瞬く間に、どこかに流れて行ってしまった。6時間目のチャイムがなった。さぁ、部活の時間である。


テーマ:方程式 スイーツ

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解説

  • 手紙の中の内容「X」と「Y」は男同士でボーイズ・ラブ的な内容だったことは…伝わってない可能性があるように思えた。男も女に「かける」しね。
  • 余裕があったら手紙の内容は手描きの画像でも用意すべきだったか。
  • 登場人物の名前。
    • 「原田又男」は「薔薇」と「股」。
    • 「大沢利一」は「大触り」。
    • 「帆伊豆恋」は「恋」は「れん」と読む。意味ないけど「ミラクル博士の無敵のトライアングル人類殲滅作戦。」に出ている事務員と同一人物。
    • 「藤吉」は「腐女子」。
    • 「木藤仁美」は「既腐人」。
      • という感じで男性同性愛をイメージさせる名前にしていた。
      • けど、人は人、名前は名前と考えた時に、作品の雰囲気が名前に反映されるのはおかしい。

 時間がなかったから、推敲なしの一発書きだったのだけど、自分では好きな感じに書けたのだけどなぁ。